勘のいい子
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覆わずにはいられなかった。
「うっ……この、溶けたプラスチックみたいな臭いは……」
「ホルマリン漬けですね……」
えりかもハルトと同じように鼻をつまんでいる。少し抵抗しているようにも見える彼女は、ハルトを先導して研究室へ足を進めていた。
えりかの足取りには全く迷いがなく、真っ直ぐ目的の研究室の戸を叩く。
「教授、いますか?」
えりかに続いて地下の研究室に足を踏み入れるハルト。
だが、返答はない。
一歩一歩足が進むごとに、ぐちゃぐちゃとした音が足元から聞こえてくる。暗がりで踏んでいるものが見えないのは、果たして幸か不幸か。
「ここ……結構広いな」
足元と違い、胸元から上は、淡い光で視ることができる。切れかかっている電気が、大きな奥行きを示している。
えりかも眉をひそめながら、ハルトに続く。
「ここの電力まで使う、大がかりな研究を行っているのでしょうか」
「ここ、施設の電力まで使えるの?」
「はい。相当の電力が必要な実験もありますから、大学へ申請すれば可能です」
「随分羽振りがいい大学だな……」
だったらもう少し設備を強化すればいいのに。ハルトはそう思いながら、教授の姿を探す。
「あの黒いローブがいい感じに保護色になってない? 探しにくいったらないな……」
ハルトは口を尖らせながら、どんどん進んでいく。
やがて、部屋の一角。小さなドアから、光が漏れている箇所を発見する。
ノックをすると、奥から「どうぞ」という声が返って来た。
「失礼します、教授」
ハルトはドアを開ける。
屈んでいた姿勢の教授は、ゆったりと起き上がり、ハルトへ顔を向けた。
「おや、おや。松菜さん。もう手伝っていただける時間でしたか」
教授はゆっくりとこちらに振り向いた。
ハルトは比較的明るい室内を見渡しながら頷く。
「はい。それより教授、その犬は?」
この部屋を見れば、まず誰でも気になるであろうその存在が、個室の片隅にいた。
大型犬にカテゴライズされるのであろう。ハルトの腰ほどの大きさがある白い犬。その白く丸い眼が、じっとハルトとえりかを見上げている。
「犬なんて飼ってたんですか?」
「犬ではありませんよ」
教授はハルトとえりかを狭い室内に迎え入れた。
「これは、私が作り上げた新しい生命体ですよ」
「新しい……生命体?」
少しのむずがゆさが、ハルトの背筋を走る。
一方教授は体を全く動かさないまま、話を続けた。
「私の研究分野については前に伝えましたね?」
「え、ええ。生命の深みを研究していると……でも、生物を作り上げることが、そういうことなんですか?」
ハルトはじっと真っ白な犬型生物の目を見つ
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