第一章 グレンダン編
シキという武芸者
知り合いは選べない【微リメイク】
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は自問自答した。
「それに君は孤児だ。孤児が天剣授受者なんてことになったら、孤児の現状を打破できるかもしれない」
「なっ!?」
卑怯だ、そうシキは思った。つねづねシキはそれを考えていた。一武芸者ではまったく皆取り合ってくれない。が、もしも天剣授受者になれば……。
「……」
「つまらない話をしたね。この地面は僕が直しておくよ。じゃあね、シキ」
そう言うとサヴァリスの姿が消える。いや、違う膨大な剄を足に収束させて飛んだだけだ。呆然と立ち尽くすシキ、その姿は迷子になった子供のように見えた。
シキは気づけなかった。いや気づきたくなかったのだ、シキがサヴァリスに抱いた感情は……同族嫌悪なのだから。
「ただいま……」
適当な布で傷口を覆って、活剄で傷口を無理やり塞ぐ。
レイフォンと比べても異常なほど膨大な剄のおかげで回復に回せる剄などいくらでもある。孤児院に着く頃にはすでに皮が再生され、後は中の内出血さえ治せば完璧に治る。
だが、シキの頭の中ではグルグルとサヴァリスとの会話が繰り返し再生される。だからだろうか、いつもなら気づくものに気づかずに床にあった「誰か」を踏んづけてしまった。
「な、なんだ――――はっ!?」
踏んづけたものがなんなのかわかるとシキすぐに後方に下がり、周りを警戒する。
なんと倒れていたのはレイフォンだった。顔色が悪く、すぐに立ち上がることができないということがよくわかる。そして周りを見るとレイフォンと同じように、年上の兄、姉たちが倒れていた。
シキは思った、誰かの襲撃かと。そこで帰ってきたシキに気づいたのか、レイフォンが咳き込みながらシキの服を掴んだ。
「し、シキ」
「レイフォン! 大丈夫か、おい、レイフォン!!」
「りょ、料理に……ゴフッ」
「料理がどうした? おい、レイフォン!!」
吐血しながらレイフォンが再度倒れこむ。それを見てシキは警戒度を最大まで引き上げる。レイフォンほどの実力者をここまで一方的にやられるとは考えられなかった。
ふと足元を見ると黒いナニカが転がっていた。それは腐臭を漂わせながら孤児院全体に匂いが広がっていた。
「……」
嫌な予感がした。ものすっごい嫌な予感がした。
案の定、台所からはリーリンの声とクララの泣き声が聞こえた。シキはため息をつきながら台所に広がっているだろう地獄を予想した。
『わ、悪気はなかったんです。ただ料理作りたくなって作って、皆さんに食べてもらったら……ひぐっ!?』
といった直後、クララはシキからの拳骨を受けた。悪気がなくても、食中毒が起きていたのだ。ルシャたちに着いて行ったのが幸いしたが、もしも子供たちが食べれば取り返しのつかないことになっていたかもしれない。
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