第一章 グレンダン編
シキという武芸者
知り合いは選べない【微リメイク】
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思いながら今日も孤児院の子供たちの面倒を見る。が、今日はデルクにとっても孤児院にとっても嬉しい日であった。
いつも喧騒が絶えない孤児院だが、今日は二割増しに忙しかった。
「シキ、次は?」
「えーと焼豚? 作り方わからねえ!!」
今日も今日とて千人衝を使いながらシキは大量の食材を調理していた。ルッケンスの者が見たら滂沱の涙を流し嘆くだろう。しかし、猫の手も借りたいくらい今日の孤児院は忙しかった。
「シキ! 食材切れたよ!」
「姉さん、こっちに入れて!」
「どれに!?」
リーリンが綺麗に切った色とりどりの野菜をボウルに入れながら困惑の声を上げた。
とりあえず、手前にいたシキに渡すと目に見えないスピードでボウルに入っていた食材を投げ、その隣に鍋を持ったシキがキャッチする。
別のシキが化錬剄で鍋を熱しながら、もう一方の手でデザートを作り始める。
台所は戦場とはよく言ったものであり、それだとシキはたった一人のコック(ワンマンアーミー)だろう。
「姉さぁああああん! 時間は、時間は大丈夫!?」
「な、なんとか……あぁ、もうなんでこんな日に皆、寝込んでいるのよ!!」
リーリンとシキは涙目になりながら、現在休んでいるレイフォンやその他料理ができる大人たちに向かって叫ぶ。
そして涙目で白と黒の入り混じった髪の毛の頭を押さえている少女がビクリと体を震わせた。
時間は大体、三時間半前に遡る。
「うん、綺麗だよ、ルシャ姉」
「ありがとね、シキ、着心地が最高だね」
孤児院では一人の女性がウェディングドレスに身を包んでいた。純白のドレスで質も良い、ひと目で結構な値段がするとわかる代物だった。
「たまにはこうやって金を使わないとねぇ」
実際、孤児院にこんな上等なドレスを買う金はない……のだが、度重なる汚染獣の襲来と連続した武芸大会、そして個人的なアルバイトのおかげで資金に余裕があったのだ。
ならばたまには豪勢しようとシキが提案し、レイフォンも笑顔で同意した。
その甲斐あって、ルシャは上等なドレスに豪勢なご馳走まで食べられることになったのだ。家族思いの弟に泣きそうになるルシャだったが、なんとか堪える。泣くのは自分の性分に合っていない。
「でも、まさかルシャ姉の結婚相手がルイメイさんだったとは……後で不意打ちするか」
シキは遠い目でルシャを見る。ルシャは舌を出しながらいたずらに成功した子供のような仕草を見せた。
ルイメイ、本名をルイメイ・ガーラント・メックリング、グレンダンの武芸者の到達点である天剣授受者の一人で、シキとは知り合いであった。
「まぁ、彼はギリギリまで秘密にしておいてくれって言ってたしねえ」
「ルイメイさん……今日、一回くらい殴ってやる
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