42:人の本質
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…
「――〜〜ッ!!」
そして、その背へと一息に刃を突き降ろし――
………………
…………
……
…
――降ろせなかった。
「………………できないよっ……」
手は、その背に刺さる直前で止まり、震えていた。
「…………こんなの……出来ないよぉっ……!」
また一層大きな涙の粒が、ボクの頬を伝う。
しかしそれは、顎の先まで伝うことは無かった。
すぐそこから聞こえる、温かな息遣い。
抱き締めるユニコーンが、その水滴をすくい取っていた。
もう……堪えるのは無理だった。
手からナイフが滑り落ちるのを合図に……
ボクはこの子を強く抱き締め目を強く瞑り、せめて声だけでも殺しながら泣き出してしまう。
「あぁっ……うぁぁ、ああっ……」
……ボクはなんだ。
人でありながら、この子を殺さず。
人を憎みながら、この子に人の恐ろしさを教えられず。
ルビーを亡くした痛みさえも、誰にも打ち明けられなくて。
挙句、自分はモンスターでもないのに、こうしてモンスターに泣きついている。
本当に、無力だった。
神から、人の愚かな本質を見せ付けられているようだった。
◆
……それからどれほど経っただろうか。
その間、この子はボクをずっと受け入れ続けてくれていた。ボクが受け入れる側だったのに、いつのまにかボクはこの子に慰められてしまっていた。
まずはその礼を言おうと……ずっと瞑っていた目を開けた。
すると目の前には、
【《ミストユニコーン》のテイミングに成功しました。《使い魔》にしますか? 【YES/NO】】
という、あの時見たメッセージが、再びボクの眼前に広がっていた。
「―――――――――」
もう、言葉が出なかった。
……いや、正しく言うならば、
「―――――――――」
『―――――――――』
――もう、言葉も要らなかった。
ボクは驚き、胸の中のこの子を見ると、この子はその身をボクに完全に委ねていて。
目が合い、その深紅の目には、確かな信頼の色が宿っていた。
そしてボクは再びその子を抱き締め、心の底から泣いた。
……何もかもが、ルビーと出会ったあの時と一緒だった。
ボクが、あのミストユニコーンに再び出会い……そして心を許される。
確率にすれば、天文学的数値になるのではないだろうか。
――このような奇跡も起きるのだ。
まるで、神が与えてくれたかのような……
いや……神などいない。 神なんてものは、人間が作った、ただの偶像だ。
この奇跡をくれたのは……他でもない、この子達だ。
そこに人間なんて入り
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