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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
42:人の本質
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ク、泣いて……?」

 その頬は……いつの間にか、涙で濡れていた。
 ……思えば、ボクはあの日から、ずっとずっと涙を流し続けていた気がする。
 この子は……ボクの涙を、拭ってくれていた。

「……そういうこと、か……。……優しいね、キミは……」

 ボクがそう言いながら軽くその顔に手を添えてやると、嬉しそうに一層ボクの頬を拭う。

「すごく、嬉しい…………あははっ。ちょっと、くすぐったいよ……」

 ああ……こんな風に笑ったのは、いつぶりだろう……?

 ――気付けば、ボクの胸の内にあったはずの煮えたぎる憎しみは、どこかへと消えてしまっていた。

 ……もう、ボクの心を分かってくれるのは、人間じゃなくて、この子達だけだった。

 ……でも、

「……ダメ、ダメだよ……」

 ボクはその子の顔から引き離れた。
 ユニコーンはすかさず再び接近しようとしてくるが、ボクはその顔を両側からそって手を添えて阻止した。

「ダメ……。こういうことをするのは、これで……最後にして。キミは、人を信じちゃいけないんだ。言ってること、分かる……?」

 すると、少し考える素振りを見せるが……すぐにボクの顔に近づこうとぐいぐいと手を押してきていた。思わずそれに小さく苦笑する。
 だが……これでは本当にダメだった。
 この子は、ボク達の……いや、人間共の恐ろしさを知らなくちゃいけない。ボクやルビーの二の舞にならない為にも。
 ボクはしばらく考えた末に……

「――…………仕方ない、ね。……おいで」

 阻止していた両手を広げ、ルビーにもしていた風に、この子を迎えた。すぐにこの子は嬉しそうにボクの胸の中に歩を進め、甘えるようにボクの肩にその顎を乗せはじめた。その横顔は安心しきり、とても嬉しそうだ。

「いい子、いい子……」

 ボクも、この子を左手で軽く抱き寄せ……――そして、右手で腰のベルトから、サブ装備の投擲ナイフを一本引き抜いた。
 ユニコーンはボクに抱き締められ、それに気付かない。

 ――この子が人の怖さを知ろうとしないならば……もう、ボクがそれを教えるしかなかった。

 ボクは手のナイフをユニコーンの背に狙いを定める。ナイフの殺傷力は低く、一撃で殺してしまうことはない。この傷を負うことで、ボクと出会う前のルビーのように、人に恐怖して誰にも狩られないようにするのだ。
 他でもない……この子の為に。

「いい子だね……ボクも、キミが大好きだよ……」

 そう。

 こんなにも、キミ達のことが大好きだから。


 ――――だから、人間(ボク)の前から居なくなって……?


 ――――さよなら。


 と、心の中で別れを告げながら、息を軽く吸い、右手を振り上げて…
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