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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
42:人の本質
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ハァ……なんでっ……なんでだよっ!?」

 ボクの心は、ルビーの死と共に死んだはずだった。……死んだ、と思うほどに冷え切ったはずだった。
 だが……今のボクはなんだ。
 心の氷が、溶かされているかのようだった。

 あの人に微笑まれて、救われたと安心してしまった。抱き締められて、全てを委ねてしまいたいと思った。……甘えたい。そう思ってしまった。
 なんてことだ。
 こともあろうに……ボクは……あんなに憎くかった人間を、欲してしまっていたのだ。
 ルビーを失った悲しみと憎しみを、忘れかけていたのだ……!
 人間(ボク)は……なんて愚かなんだ……!!

「……〜〜ッ!! うわぁぁっ!! うあぁぁああっ――ぁくあっ!?」

 苦悩に頭を抱えながらしばらく走っていたからか……足元に伸びる木の根に気付かず、ボクはそれにつまずき盛大に転んだ。

「……つっ……うっ、うぅぅっ……! なんでっ……どうしてだよっ……!!」

 倒れたまま、行き場の無い感情の爆発をダンッ、と拳で握り地に叩きつける。

 ……なんで、今になって。
 なんで今になって、ボクの前にそんな人が現れたんだよ……!?
 どうして、ルビーと友達になった時に、ルビーを救いたかった時に、あんな人が現れなかったんだよ!!
 ボクは心の中で何度も叫び、問い詰める。
 が……

 その時――背後から、何者かがゆっくり近づいてくる足音が聞こえた。

 恐らく、あの女が心配して追ってきたのだ。
 もう、すぐそこまで足音は近付いていた。
 数秒後には、またあの温かな手でボクの肩に手を伸ばし、優しく抱き起こしてくれる事だろう。

「ゥウウヴ……!!」

 もう……それすらも、憎い。途轍もなく憎かった。
 彼女すらも……あの子を救わず、同じ人であるボクだけを救おうとしているんだ……!
 そうだ、そうに違いない……!

「グゥウウウッ……!!」

 ――人なぞ……みんな、消えて無くなればいい……!!

 煮えたぎりそうな憎悪を感じていたその時には……ボクは無意識に武器を呼び出し、手に握っていた。
 今まで使っていた巨斧はもう無いのに。

 気付けば、その手には――今のボクの心のように、どす黒い……あの巨大な《大鎌》が握られていた。

 今のボクが、それを()()()()()()()、という疑問を感じる前に。
 ボクはその場から起き上がると同時に、両手でそれを確りと握り締める。
 ギリギリとその手にはいくらでも力が込められ、手だけでなく鎌すらもカチチチと細かく震える。

「…………消えろ……消えろッ……!!」

 どいつもこいつも、みんなみんなみんな。
 この世界の、人間という人間
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