42:人の本質
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…うぁぁぁっ……」
本当に、惨めだった。
もう、涙が流れるのを我慢できなかった。
ボクの最期は、こんなにも惨めなものになってしまったのか。
こんな最期じゃ……お父さんは笑顔でボクを迎えてはくれないだろう。
それどころか……地獄に墜ちたっておかしくない。それほどに、この世への憎悪を心に持った最期なのだ。
もう……お母さんにも、お父さんにさえ、会えなくなる。
……永久に。
「いや……いや、だ……」
……これならまだ、あの時ルビーに殺されたほうが良かった。
……これならまだ、人など信じられないものだと知る前に死ぬ方が良かった……!!
その時、涙に濡れる視界で、きらりと何かが目に写った。
さっきまでは木々で隠れていた、夜空の一番大きな光……かつてルビーが眺めた、上弦の三日月だった。
手を伸ばす。宙に浮くこの体で、必死に輝きへと指を震わせる。
届かない。届かない。
それどころか、徐々に遠ざかっていく。
ボクの体が、地に差し迫っていた。
……もう、声も出なかった。
死ぬ。
殺される。
嫌……嫌だ……!
死にたくないっ……!
――…………助けてっ……誰か、助けてよっ……!!
「……………」
……………しかし、誰も応えない。
何も起きず、ただ体が地に、死に近づくだけだった。
当然だった。
なんせ……
――人など、『そう』いう生き物だったのだから……!!
――人なんて……人なんて……!!
どろっとドス黒い感情が、一気に胸の内に去来する。
今生の最後に、そう呪いながら……体が地に叩きつけられようとしていた。
が――
ばふっ。
「――――――え?」
ボクの体は、硬い地面に叩きつけられるわけでも、サイの群れの追い討ちが待ち受けてられているわけでもなかった。
ふわっ、とした……柔らかい感触の緩衝により、落下していたボクの体は守られていた。
視界を見回す。まず、横たわる体の爪先――つまり、ボクが吹き飛んで来た方向を見た。
三匹のサイ型モンスターは、数メートル先で、こちらに突撃したくもできない、そんなもどかしそうな仕草で猛っていた。見れば、彼らの目の前には木で出来たアーチ型の門があり、そこに透明な壁でも出来ているが如く、侵入してくる様子を見せなかった。
次に目を動かし、軽く左右を見渡せば、立ち並ぶ寂れた家々があった。そして気付く。ボクはどうやら……村の中、圏内に吹き飛んできたようだった。それによりモンスターである彼らは、ボクのいる村の境界より内側に侵入できずにいたのだ。
やがて、すぐにモンスター達は此方に尾を向けて、暗い森の中へと
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