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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
42:人の本質
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 そして、ボクのレベルが攻略組にも通用しそうになった頃。

 ……勝利の女神は、そう何度も微笑み続けてはくれない。
 無茶を続けた当然の結果である『その時』が、やってきた。

「う、ぐっ……! ウグォァアアア……!!」

 この時には、もう自分がどの階層に居るのかすら分からなくなっていた。
 知らぬ薄暗い森の中、間違いなくその階層最強クラスであろう大型のサイ型モンスター相手に、ボクは後塵を拝していた。
 しかもそれが三匹。一匹相手ずつならまだ手はあるのだが……群れのアルゴリズムが適用されているのか、意外な程に強いチームワークに結束した彼らは、スイッチに似た交代式の突撃攻撃で代わる代わるボクに次々と突っ込んできていた。ボクに攻撃するスキはおろか、避けて逃げる余裕すら与えないのだ。結果、ボクは後退しながらそれらを斧でガードし続けることしか出来なくなっていた。それ以外の手段は皆無。後退と防御以外の何かするスキを少しでも見せたら、ボクは突撃の波に飲まれ、あっという間にHPを散らされるのがハッキリと目に見えていた。
 これがソロの、最大の弱点。
 ゲームで言うところの、いわゆる…………詰み、である。

「ウグゥゥウ……!! ……うっ、うぅうぅぅっ……!」

 どんどん後方へと歩を進めては斧を振り回し、まっすぐ突っ込んでくる巨大な角をかろうじで弾きながら……

「うっ……ひぐっ、うぅぅうっ……!」

 ボクは(うめ)きながら、なぜか……泣き出すのを、必死に我慢していた。
 ……惨めだった。
 そう、感じた直後、

 …………バキッ!!

「がっ……!」

 という、乾いた派手な音を立てて……今まで振るってきた巨斧が、柄から真っ二つに折れた。
 気づけばその斧は柄も刃も、いつ折れてもおかしくなかったほどに傷んでいた。

「……ぐあっはっ……!!」

 そして当然の如く、ボクは既に目に前にあった巨大なサイの角に突き上げられる形で突撃をモロに喰らった。
 しかもなんてことか……クリティカルヒット。
 ボクの小さな体は打ち上げられ、仰向けに大きくまっすぐ後方へ、綺麗な半円を描く形で吹っ飛んだ。

(――ああ……)

 今の仰向けに吹き飛ぶボクの視界には、森の木々の間から垣間見える、夜空が写っていた。
 その時間がやたらと長く……いや、時間が止まっているかのようだった。
 これが、走馬灯……というヤツだろうか。
 吹っ飛んだことにより、体が不思議な浮遊感に包まれる。しかし体感時間ではこんなに長く感じられても、あと現実時間で数秒もすれば、ボクは地に叩きつけられ、サイ共に追撃を喰らわされては踏み倒され、そして残り僅かなHPを散らせて呆気なく死ぬことだろう。
 ……………。

「うっ…
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