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美人店長の素顔
第二章

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「あそこの組長の娘さんだよ」
「そ、そうなんですか」
「ああ、わしは港で働いてるんだよ」
 客は自分のことも話した。
「だからな」
「ヤクザ屋さんを見ることもあるんですね」
「それで知ってるんだよ」
「店長さんのことを」
「そうだよ、だからな」
「店長さんが怖くないか」
「気になったんだよ」
 そうだったというのだ。
「何かしないかな」
「いえ、本当に」
 真面目にだ、加藤は客に答えた。
「いい店長さんですよ」
「ヤクザ屋さんの娘さんでもな」
「その人はその人ですね」
 加藤はこう返した。
「ヤクザ屋さんの組長さんの娘さんでも」
「怖いとは限らないか」
「そうじゃないですか?」
 こう言うのだった。
「別に」
「その人それぞれか」
「はい、穏やかで優しくて」
 加藤は柿本のことをさらに話した。
「公平で」
「いい人なんだな」
「とても」
「そうか、わしが間違えていたな」
 客は加藤の話を聞いて納得した。
「その人それぞれだな、家がどうでもな」
「その人はわからないですね」
「ああ、もうこうしたことは言わないな」
 こう加藤に言った。
「そうするな」
「そうされますか」
「ああ、二度と言わないし思わないよ」
 加藤に微笑んで言った、そして多くの商品を買って帰った。 
 柿本はいい店長のままだった、ある休日夫と息子が店に来たが。
「サラリーマンでね。息子も素直でいい子で」
「いい家庭ですか」
「とてもね。穏やかに暮らしているわ」
 加藤に微笑んで話した。
「今日はお弁当忘れたら持って来てくれて」
「よかったですね」
「ええ、これで午後も頑張れるわ」 
 こう言って夫から弁当を受け取り息子の頭を撫でた。その時の柿本の顔はこれ以上はないまでに優しく温かいものだった。


美人店長の素顔   完


                     2025・1・22
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