第百五十五話 他人の幸せその十二
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「自分の音楽は万人がひれ伏すものと思っていて」
「尊大過ぎるわね」
「ちょっとしたことで怒って喚いて」
そうしてというのだ。
「ものを投げる」
「無茶苦茶な癇癪持ちね」
「だから人付き合いはね」
「出来ない人だったのよね」
「世渡りも下手だったし」
養子にした甥とも結構衝突したとのことだ。
「敵も多かったのよ」
「そんな性格だから」
「清廉潔白で公平だったけれど」
そして生真面目であった、そうした美点は彼の人生そして音楽にも見事に出ていると言えるだろうか。
「敵に囲まれていたのよ」
「全然いい人生じゃないわね」
「性格がそうでね」
「音楽は凄いけれど」
「それで偉人になってるけれど」
「奇人よね、性格は」
「モーツァルトさんとは別の意味でね」
彼もまた性格は色々言われているがというのだ。
「まあ偉人っていっても人間だし」
「問題あるわね」
「性格も素晴らしいかっていうと」
「そうとも限らないわね」
「子供の頃読んだ偉人のお話で石川啄木さんもいたけれど」
かな恵はこの詩人の名前を出した。
「遊び人で遊郭好きでお金ないとお友達にたかって」
「屑だったのよね」
「そうなのよね」
「野口英世さんもお世話になってる人からお金借りて」
「遊郭に行ってたし」
「医学には熱心でも」
「生活はもうね」
彼等のそれはというのだ。
「即刻勘当される様な」
「昔だとね」
一華はかな恵に応えて言った。
「最低なものよね」
「もうね」
「そうよね、それでもいい部分もあるし」
性格的にというのだ。
「あの森鴎外さんでもね」
「あるわね」
「夏目漱石さんなんか被害妄想強くておっちょこちょいなところあって」
「DVだけれどね」
「弟子の人達への面倒見よかったし」
「いい部分もあったのよ」
「あの人もね」
そうした問題点があったというのだ。
「そうだったのよ」
「そうよね」
「いいところがない人なんて」
一華はそれこそと言った。
「まずいないわね」
「さっきお話に出たし学校でも有名な教会にいた人でもないとね」
「だから人はでしょ」
「人ならなの」
「そりゃ堕ちるところまで堕ちて」
そうしてというのだ。
「餓鬼になったらね」
「いいところもないのね」
「人だからいいところもあるのよ」
「けれど餓鬼になったら」
「もうね」
それこそというのだ。
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