1話
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るような空間だった。
開けた空間に騎士を思わせる意匠の2、3メートルはある像が両隣に置いている大きな扉。壁に隙間なく描かれている魔法陣。そして地面には乾いた血のようなモノが広がっていて床の模様を隠しているがもしかしたら魔法陣のようなモノが床にもあるのかもしれない。よく観察できたのならその扉の中から出てきた血だとわかるだろう。
もはや複雑な思考も出来ないのもあるがあえて理解の出来ない模様の意味を考えずに前へ進む。
自分の血の匂いとこの場所の古い血の匂いに気分を悪くしながらも扉を開けようと触れて押す。少しは動くが中々進まない。血か砂が挟まっているのか長い時間開くことがなかったからなのか扉が重い。少年は荒い呼吸の中で体当たりするように押して行く。
そしてぎぃぎぃと音を立てて扉が開く。扉を開けると部屋の中は突然壁にある照明のような何かに灯りが点く。そこは直径10メートルはある円形の部屋で中心には石碑のようなモノがある。
そしてその中心部に光で構築された鎖で吊られた青髪の少女が剣を突き立てられて磔にされていた。
俺はその少女を見た瞬間に痛みや苦痛、全てを忘れて見ていた。長く伸ばされた青い髪、少女らしい華奢な体格、蝶の標本のようにそこにありながらも目を離すと消えてしまいそうな雰囲気。俺は目を離せずにいた。その永遠にも思えた一瞬が過ぎて俺はゆらゆらと歩いてソレへと近づく。人形のように可愛らしい少女へと、この状況で命があることが可笑しいのに未だ血を流し続けるナニかへと近づき手を伸ばす。
(俺は何をして…)
(ああ…でも…)
自分でも理解しきれない衝動で動く少年は彼女の頬へ血に汚れた震えるその手を伸ばす。
そしてその手は少女に届き、少女は目を覚ました。
不吉を覚える程に美しい金眼と血を流しすぎて霞む視界の中で合う。
次の瞬間に鎖のようなものは砕けて消える。まずはカランと刺さっていた剣が抜けて落ちる。そして血を流すのが止まった少女はゆっくりと落ちてくる。
「あなたは誰?」
鈴が鳴るような声が聞こえる。
「…っ…っ」
俺は答えようとして口を開けるもヒューヒューと息が抜けるような音しか出ない。
「ああ…あなたの命は消えてしまいそうなのね」
少女は肉体の傷を見ることはなく何かを見透かすように見てそう言ってほんの少し悲しそうに目を閉じる。
「そんな有様なのに私を解放した…馬鹿な人」
そして目を少女は目を開けて言う。
「私はあなたを助けることができるわ」
「……でもそれは今ここで命をなくすことより辛い道を歩むことになるかもしれない」
人形のような何もない空っぽだと感じさせられるような話し方で人間性のある思いやりのあるように『ここで死ぬべきだと』と告げる。
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