1話
[1/5]
[1]次 最後
燦々と降り注ぐ日差し、どこまでも吹き抜けるような風に混ざる砂礫、地面には熱を帯びた砂。枯れた果てた植物のようなモノを見つけたがここはオアシスのあった場所だろう。
サラサラとする歩きにくい砂地を拾った棒のような物を頼りにし、大きいハンカチかスカーフ代わりに口元を覆い帽子を被り日差しを避け学生服姿の少年が決めた方向へ進んでいる。
「暑い…暑すぎる…まるで地獄だ…」
そこはまさしく砂漠であった。永遠に命の存在し得ない場所、不帰の土地と恐れられるような場所だと異世界から迷い込んできてしまったばかりの少年に突きつけてくる。
少年は荒野を歩く、一人で頼る物も人もない。いつも通りの日常、いつも通り朝起きて布団の中から出るのも面倒だと思いながらも出て、いつも通り母親が作った朝食を食べ、そしていつも通り家を出た。そうして異なる世界の死地へ迷い込んだのだから。いつも通り過ごしていただけの少年にこのような試練が襲いかかるなど許されていいのだろうか。
持っていた水筒のお茶も尽き、目印も何もない土地をあてもないが最初に決めた方角から逸れないようにと必死に一歩一歩進んでいく。
この砂漠に迷い込んだ当初は混乱して声を上げて助けを求めたが周囲に人の痕跡は愚か生き物を見つけることすら出来ず、空を飛ぶ鳥すらも見当たらない。そして乾いた暑い風が喉に張り付き、額から垂れた汗は目に入る前に乾き消え、靴越しにでも足を焼くような熱気を感じ一刻も速くこの命のない場所から抜け出すため前へ進むことを少年は選んだ。
しばらく慣れない砂地を時折転びそうになりながらも歩き、日が直上から少し傾いた頃に水が見え始めたと感じる頃にゆらゆらと揺らめくような水場が遠くに見えるようになる。ほんの少しだけでも冷静なら気がついたかもしれない、このような場所で突然現れた水を追ってはならないのだと。
「…オアシス…なのか…?」
それを見て日差しと熱で眩んだ頭で笑みを浮かべる。少し軽やかになった心で水場へ向かって急ぐように歩く。しかし日がまた傾いていく中進み続けても一向に近ずくことはできない。まるで逃げるように水は去っていく。そうしてようやく気がつく。
「…蜃気楼か…俺は…このまま死ぬのかな」
このままでは見知らぬ土地で死に誰にも見つかることなく供養されることもなく荼毘に付されることのないミイラのようになってしまうのかと不吉な想像が脳裏をよぎる。どうしようもなく泣きたくなるがこのような環境下で、今の状況で泣けるはずもない。
そしてしばらく地面にうずくまるようになってしまいながら少し休憩をすると日が沈みだしていた。太陽が沈みガラリと世界が変わる。自身を焼く日差しと熱は消え去ったが今度は目も痛むような眩しいくらいの星明かりと月明かりに照らされ凍えるよう
[1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ