第一話 恐怖の居合ホームランその五
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「姿が見えないが」
「飛鳥は学校だ」
飛麿はすぐに答えた。
「今帰宅途中だ」
「そうなのか」
「まだ男性恐怖症は治っていないが」
しかしというのだ。
「試合は出来る」
「じゃあいいっちゃね」
「戦力になる筈だ、だが」
「どうしたのだ、トンちゃん」
「飛鳥は大谷選手をテレビで観てお兄様の次に素晴らしいと言ってだ」
そのお兄さまである面堂に答えた。
「好きになった、しかも凄過ぎて勝てないとだ」
「飛鳥さんでもか」
「言っている、そもそもここで大谷選手に勝てると思う者がいるか」
飛麿は一同に問うた。
「一人でも」
「・・・・・・・・・」
誰もが沈黙した、それが何よりの返答だった。そしてしのぶはその沈黙の後で言った。
「普通にプロ野球選手って凄いけれど」
「野球をしている者の中でプロになれる者は僅かだ」
さくらも腕を組んで言った。
「まさにな」
「その中で活躍出来る人はさらに少なくて」
「厳しい世界だ、実にな」
「しかもその中でメジャー行ける人は少しで」
「ましてそのメジャーが狭い程じゃ」
「投打二刀流で」
「その様な者と渡り合えるなぞ」
それこそとだ、さくらはさらに言った。
「やはりな」
「いないですね」
「うむ、到底な」
「私達もですね」
「しのぶ、お主一六五キロのストレートを投げられるか」
さくらはしのぶに真顔で問うた。
「一三八キロ四十三センチ真横に曲がるスライダーを」
「どっちも無理ですよ」
流石のしのぶも仰天した顔になって答えた。
「他にも一九二センチ斜めに落ちるカーブと一五一キロのスプリットですね」
「一六三センチのシンカーもある」
「それ全部人間の投げるボールかよ」
竜之介もそう言うまでだった。
「有り得ないだろ」
「しかもここでさらに打つっちゃ」
ラムはどうかという顔で述べた。
「ホームランシーズン五十四本っちゃ」
「すげえよな、本当に」
「盗塁は五十九っちゃ」
「こうして見ると一人の人間の記録でも相当ではないか」
あたるも難しい顔で言った。
「しかも守備の動きもいいな」
「うむ、あまり機会はないがな」
チェリーも認めることだった。
「あの者は守備もかなりである」
「あれだけ背の高い人で動きがいいのか」
「左様じゃ」
「俺は勝てないぞ」
「むしろあんな人がいること自体が信じられない」
面堂は言い切った。
「確かに阪神に入れば日本一間違いなしだが」
「勝てないか」
「そう言うしかない」
あたるに真顔で答えた。
「僕もな。しかし勝負は僅かな可能性でもだ」
「それでも勝てるかも知れないか」
「勝負なある程度運も関わる」
面堂はパーマことコースケに答えた。
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