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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#15
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た内容は、何故かビゲラブナを愕然とさせた。

(私の番────)

 何とかおこぼれを与ろうと、先代ベイラリオ侯爵に取り入っていた頃は、邪魔立てする輩や不要になった仲間が追い落とされるたびに、自分はうまく立ち回らなければと考えていた。

 防衛大臣を任された当初も、切り捨てられることのないよう、あんなに注力していたのに────いつからか、そんなことは考えることもしなくなっていた。自分が切り捨てられることなどあるわけがない、と。

「君は毒杯を賜ることになっている。公開処刑じゃなくて良かったね。まあ、でも、その前に────色々教えてもらいたいことがあるから、拷問を受けてもらうけど」

「毒杯……、拷問……」

 ビゲラブナは─────呆然とその言葉を繰り返す。

 この立場になってから、毒杯での死罪に処された者はいなかったため、どんな毒を与えられるのか、どんな最期を遂げるのか想像もつかないが────拷問には、何度も立ち会ったことがある。

 有罪とされた者が責め苦に耐えかね、泣き叫んで────拷問を止めるよう懇願する様を見るのは愉しかった。それをさせている自分が神にでもなったようで、優越感を味わうことができたからだ。

 あれを────泣き叫び懇願せずにいられない、あの仕打ちを────この自分が受ける?

「今日のところは、これで退散するよ。拷問は明日から始めるから────ゆっくり休んでおくといい」
 
 シュロム=アン・ロウェルダが、そう言い置いて、踵を返す。
 凍てついた眼差しをビゲラブナから外して、ダズロ=アン・イルノラドが、それに続く。
 二人を追って、留まっていた騎士たちも出て行った。

 誰一人として、呆然としたままのビゲラブナを振り返ることはなかった。


 シュロム=アン・ロウェルダも、ダズロ=アン・イルノラドも、自分をここへ連れて来たあの騎士たちも、これまで厚遇してやった同志だと思っていた連中も────ビゲラブナが死ぬことにも苦しむことにも、きっと何の痛痒も感じないに違いない。

「クソっ、クソ…っ、あいつら───あいつら…っ、呪ってやるっ!!このまま、あいつらに思い知らせることなく死んでたまるかっ!!絶対───絶対に、一族郎党───いや、子々孫々に至るまで呪ってやる…っ!!」

 この自分が、こんな────何もできないまま、何も残せないまま、死ぬはずがない。そう信じながらも、ビゲラブナは心の底では解っていた。

 ダズロ=アン・イルノラドの言う通り────自分の番が巡って来ただけなのだと。

 これまで自分たちが切り捨て、陥れた者たちのように────どんなに無念を叫んでも、死にたくないと喚いても、呪詛の言葉を吐いても────誰にも届くことなく、ただ死ぬだけなのだ、と。
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