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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#15
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拘束を振り切ろうにも、騎士たちの進行が速くて足がもつれそうになり、大人しく階段を下りることに集中するしかない。

「!?」

 騎士たちは、階段を下り切って辿り着いた獄舎の唯一の出入り口を通り過ぎて、別の階段の方へと向かった。

 それは地下へと繋がる階段で────自分が何処に連れて行かれるかを悟って、ビゲラブナは愕然とした。

(なぜ地下牢なんかに────私は釈放されるんじゃないのか…!?)

 足が止まったビゲラブナを引き摺って、騎士たちは進んで行く。

 ビゲラブナが我に返ったのは、騎士たちによって鉄格子で仕切られた狭い牢屋に押し込められた後だった。

 高い天井付近に設けられた腕も通らない小窓から漏れる光と、随所に点る蝋燭の光で、目を凝らさなくても牢屋内の様子が見て取れるくらいには明るい。

 ビゲラブナは、自分を連れて来た騎士たちが牢屋の前に留まっていることに気づき、鉄格子を両手で掴んで叫んだ。

「一体どういうことだっ!?何でっ、何でこの私がこんな所に」


「それはね────君の罪が確定したからだよ」


 ビゲラブナの言葉を遮ってそう答えたのは、眼前にいる騎士ではなく────騎士たちの背後から現れた、このレーウェンエルダ皇国の宰相であり筆頭公爵であるシュロム=アン・ロウェルダだった。

 その後ろには、ロウェルダ公爵家に次ぐ名門イルノラド公爵家の当主であり、虧月(きげつ)騎士団団長ダズロ=アン・イルノラドもいる。

「君は皇族を手にかけた大罪人だからね。もう防衛大臣どころか───貴族ですらない君を、いつまでも貴族専用の牢に入れておけないんでね。この地下牢に移ってもらったというだけだよ」

 シュロム=アン・ロウェルダは、いつものように口元に微笑を湛え────まるで幼子に他愛無い話を聴かせるように告げる。

 当然、頭の回転の鈍いビゲラブナは、すぐにはその意味を理解できない。

「……は?」
「ルガレド皇子殿下の暗殺未遂が立証されたから、君は処刑されることが決まってね。すでに防衛大臣の任は解かれて、貴族としての身分も剥奪されている。つまり、今の君は────平民にも劣る賤民というわけだ」

 呑み込みの悪いビゲラブナに苛立っている風でも───この状況に愉悦を感じている風でもなく、シュロム=アン・ロウェルダは、先程と同じ声音でただ重ねて言い聞かせる。

「な───なに…、なにを言って────しょ、けい…、こ、この私が────処刑…?」

 いくらビゲラブナが拒んでも、脳は告げられた内容を理解してしまったようで────弛んだ頬肉が勝手に振るえ、漏れ出る言葉も震えていた。

「う────うそだ…、この私が処刑だなんて、そんな────そんなこと…、許されるわけがない…
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