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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#15
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知ったら、誰かしら行動を起こしてくれるに違いない。

 緊急会議でビゲラブナを助けるどころか、ルガレドの迫力にただ震えていただけのベイラリオ侯爵のことは、まったく当てにしていない。

 元々、現ベイラリオ侯爵は、切れ者だった先代の血を引いているとは思えないほど愚かなことが露呈していて────本人に自覚はないが、お飾りのような存在に成り下がっている。


 ここを出られたら────とにかく、ルガレド皇子は勿論、ここに連れて来たあの騎士たちにも目に物を見せてやらねば気が済まない。

 今いる牢の中を見回して────ビゲラブナの中に、新たな怒りが湧き上がる。

 貴族専用の牢だけあって、ベッドはダブルサイズで寝心地も悪くなく、トイレも風呂場もちゃんと壁に囲われている上に魔道具が使われており、常に清潔さを保っている。

 地下牢に比べたら格段に恵まれているのに、ビゲラブナにとっては不満しかなかった。

 ここより上階には、もっと広くて豪華な家具や設備が備わった牢があるのだ。

 この階の牢は中流階級に属する貴族が収容されることを想定していて、自分のような“大物”が入るような牢ではない。

 牢に入れられたという事実も屈辱ではあったが────入れられたのがこの牢屋であったことも、ビゲラブナにとって気に障る要因だった。

(この私をこんな粗末な牢に閉じ込めおって────私なら、最上階でもいいくらいなのに…!)

 最上階は、皇族を軟禁するための豪奢な牢屋でワンフロアが占められていて────世話をする者が寝泊まりするスペースまでもが備え付けられている。

 この自分にも風呂や着替えなど世話をする侍従をつけるべきで、無造作に食事を出されるだけの現状は絶対におかしい。

 そんなことばかり延々と考えていると────不意に、耳障りな金属の擦れる音が入り混じる荒々しい足音が耳に入った。

(やっと来たか…!)

 きっとビゲラブナを釈放するために、騎士たちが来たに違いない。

 溜まりに溜まった怒りと不満を少しでも解消すべく、相手がこの牢に入れたあの騎士とは違う者だろうと開口一番に罵ってやろうと、ビゲラブナは彼らを待ち構える。

 錠が動く小さな音が響いた直後、重厚な扉がゆっくりと開かれ────執務室で拘束されたときのように、駆け込んだ大勢の騎士にビゲラブナは囲まれた。

「なっ!?」

 不当に監禁したことを謝罪されるとばかり思っていたビゲラブナは、騎士たちの行動に驚いて声を漏らした。

「連れて行け!」

 騎士の一人が声高に命じ、屈強な騎士たちに両腕を掴まれて、強引に歩かされる。来たときも通った廊下を進んで、階段に出る。

 今回は上がるのでなく、階段を下りさせられるようだ。

 
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