密林の刺客
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が戦闘員からの報告を
受けていた。
「ハッ、それから空よりカンボジアに入ったそうです」
戦闘員が敬礼し報告を続ける。
「カンボジアか。シンガポールの基地をV3に潰され中国での作戦をXライダーに阻止された我々は今あの場所には一人もいない。目的は単なる観光か」
「どうやらその様です。他に連れもいる様ですし」
「だとすれば刺客を送り始末しておきたいな。ライダーは一人でも減らしておきたい」
「それでしたら既にキバ男爵と鬼火司令が行かれました。御二人共改造人間を連れておられます」
「キバ男爵と鬼火司令か」
男は戦闘員に尋ねた。
「はい」
「キバ男爵はともかく鬼火司令は頭に血が登り易い。大丈夫か」
「それですがもう一人行かれてますが」
「まだいるのか。誰だ?」
「隊長ブランクです」
「・・・・・・・・・あの男か。これは望み薄かもしれぬな」
失望をあえて滲ませて言った。
「今はこの地での作戦行動に忙しい。ここには奴もいる。俺も下手には動けぬ」
「では傍観いたしますか」
「うむ。奴の身が危うくなった場合のみ行く。あの様な者でも今は大切な駒だ」
そう言うと男は部屋の隅に掛けてある黒いマントを手に取り羽織った。
「それよりも今はこの地での作戦を成功させる方が先だ。油断していると奴に先を越されてしまうからな」
「ハッ」
男は部屋を後にした。戦闘員がそれに続く。灯りが消され部屋は闇の中に覆われていった。
「そうか、奴は動かぬか」
足下に白い霧が立ち込める一室で赤いテーブルに白服の男は座していた。座したままで戦闘員の報告を受けていた。
「ならばこちらも動く必要は無い。ここでの行動に専念出来る」
サッとトランプのカードを一枚引いた。クローバーの7だ。
「カードは温存しておこう。いざという時の為にな。フフフフ、ハハハハ」
そう言うと不敵に笑った。笑いさけが部屋の中に木霊した。
タイ、ベトナムという二つの国家に挟まれたカンボジアの歴史は動乱に揺れ動いた時期が多い。フランスの植民地から脱却し得たもののベトナム戦争に巻き込まれアメリカの傀儡政権が打ち立てられた。汚職と腐敗にまみれたこの政権が倒れると極左政権であるポル=ポト派が政権を握る。
日本の一部のマスコミや知識人が『アジア的優しさを持つ』と賛美したこの政権の正体は狂気の殺戮集団だった。知識人や技術者、都市生活者達を『反革命的』、『共産主義に反する』という理由さけで虐殺していった。
その犠牲者は一説には三百万、カンボジアの人口の約八分の三に当たる。かってこれ程の割合で自国民を虐殺した例はない。ナチスやソ連ですら及ばない空前絶後の狂気であった。
この狂気の集団による暴虐の限りが皮肉にも隣国ベトナムの軍事侵攻
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