第三部 1979年
戦争の陰翳
国際諜報団
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市内にある九條家の館。
そこではソ連工作員とスパイたちが密議を凝らしていた。
「新型のフェニックス・ミサイルは、最大射程50キロという大したものです。
このミサイルの特徴は、49キロほどは一つのミサイルで飛び、標的の100メートル前で散弾する仕掛けになっております。
50キロ先の動く標的を、確実にしとめることができるのです」
穂積は顔をゆがめると、九條とGRU工作員の少佐の方を向いた。
「これをイラクの革命防衛隊に流せば、ペルシャのファシスト共は手も足も出まい。
ミサイルを解析して、対策を取れば、イラン空軍は秘密兵器を失うことになる」
帝政イランには、すでにフェニックスミサイルを搭載したF‐14の引き渡しが決まっていた。
イラン領空を侵犯するソ連偵察機を撃退する目的で、米国から購入したのであった。
「あるいはPLOに渡して、イスラエルや親米反ソの諸国を攻撃させる。
中東経由の石油が入って来なくなれば、国際的な石油価格は上がり、ソ連は経済的苦境から脱出できる。
まさに一石二鳥の作戦よ」
ソ連の経済は、資源価格に左右されたものだった。
史実の1980年代においてアンドロポフやゴルバチョフが冷戦を終結させたのは、石油価格の下落が一因だった。
湾岸諸国の石油増産によって、石油価格が下落し、ソ連は天然資源の売買による利益が低下した。
収入が立たれたことによって、ソ連は過大な軍拡競争に耐えられなくなったのだ。
「その気に乗じ、中東各国の石油コンビナートを爆破し、人工的な大気汚染や石油流出を作る。
環境汚染で苦しむ水鳥や動物の写真などを取って、西側諸国にばらまいて、大気汚染の深刻さを演出するのだ」
もう一人のソ連協力者である大野は、少佐の意見に相槌をうつ。
「それで、西ドイツのヒッピーに金を出して、緑の党を作ったのですな」
「ああ、西側諸国が偽物の環境汚染で足踏みしている間に、ソ連は行き場の失った最新技術を格安で導入する。
やがては、極東の工場群で作られた石油化学製品で、世界経済をリードする。
我ながら、素晴らしい作戦よ。フハハハハ」
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