青き江の妖花
[5/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
来んのだ」
側に立つ白スーツの青年が言った。ネクタイと手袋がスーツとは対照的に黒なのが印象的である。黒い髪と瞳を持つホリの深い顔はギリシア彫刻の様だがそれ以上に冷酷さと傲慢さを漂わせている。
「あいつはそうそう楽には倒せん。奴を倒すのはこの俺の仕事だ」
「言ってくれるねえ。流石はゴッド第一室長だっただけはあるよ。けどあんたの仕事はあいつの相手をすることじゃあない筈なんだけどねえ」
やけにカン高く耳に障る気味の悪い声が聞こえてきた。
「何?」
「あんたの仕事は今までどおりライダーのデータを集める事。違ったかい?」
嫌らしい笑い声と共に赤い服の女が暗闇からスーーーッ、と現われてきた。
赤い服の上に裏地が緑がかった黒いマントを羽織っている。頭は巨大なケイトウの花そのものでありそこに両眼がある。デルザーで最も細菌戦及び毒等を使用した作戦を得意とする改造魔人ドクターケイトである。
古来より処刑場では多くの血が流れた。その血には刑死した囚人達の様々な思いが混ざっている。
無実の罪を着せられた者、信頼していた主君や友人に裏切られた者、野望を未だ諦められぬ者、不仁不義の罪により死ぬ者、生への執着を捨ててはいない者、他の者への憎悪で燃え盛っている者ーーーー。実に多くの様々な思念が刑場の血にはある。
こうした刑場の血を吸って花が咲いた。毒々しいまでの緑の蔦が伸び茂りその蔦に咲いた花であった。
その花は非常に整った姿形をしていた。しかしその色はドス黒く濁った赤であり看守達も気味悪がり近寄ろうとはしなかった。誰も近寄らなかったが花は相も変わらず咲いていた。
ある夜のことだった。その日は何時にも増して処刑された者の多い日であった。花の一つから白い肌を持つ女が現われた。その女は白い肌と紅の唇、緑の眼、黒い髪を持つ妖艶な美女であった。この世のものとは思えぬ美しさを持つこの女を見た者は男であれ女であれ忽ち虜となってしまった。まるで引き寄せられるかのように皆この女に歩み寄った。歩み寄った者は皆この世から去ってしまった。刑場の死刑囚達の最後の血を吸って生まれたこの女は人ではなく魔性の者だった。足のつま先から髪の毛の一本に至るまで毒に満たされた魔物であった。刑場に咲く妖花の化身、人々はこの女をアルラウネと呼んだ。
アルラウネが生まれたのはフランス南部であった。アルビジョワ十字軍によるフランスカタリ派への弾圧やフランス革命によるジャコバン派の弾圧と血生臭い惨劇が絶えなかった地である。旧教徒と新教徒の対立もあった。アルラウネはこの地に根を下ろし人々の血を吸い毒を撒き続けた。この女の行く所生ある者は皆死に絶えドス黒く変色した屍が累々と転がっていた。長きに渡ってこの地は魔物が君臨する地となった。
事態を憂慮したローマ=カトリック教会は退魔師を送
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ