第百五十五話 他人の幸せその三
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「私もインスタントラーメン食べてそれを肴にストロング飲んで」
「それで満足よね」
「そこでお隣の人がステーキ食べてワイン飲んでも」
「いいわね」
「何か問題あるの?」
そうした状況でというのだ。
「逆でもね」
「何とも思わないわね」
「ふーーん、で終わりよ」
「自分が満足していたら」
「それでお隣さんが美味しいって言ったら」
それならというのだ。
「もうね」
「いいわよね」
「明男ちゃんに彼女さん出来て幸せになったら」
留奈も言った。
「別にね」
「それでいいわね」
「もう何もね」
それこそというのだ。
「思うところないわ」
「そうよね」
「他の人に嫉妬したら」
「自分が嫌な気持ちになって」
「いいことないわよ、嫉妬する位なら」
それならというのだ。
「自分もってなって」
「努力することよね」
「これ信じられないけれど」
留奈は一華にこう前置きして話した。
「手塚治虫さん他の漫画家さんに嫉妬してね」
「あの人が?」
「作品描いていたらしいわ」
いがぐり君の作者にそうしていてどろろは水木しげるに異常なまでに嫉妬してそのうえで描いていたという。
「負けるかとか自分はもっと、って思ってね」
「嘘でしょ、だってね」
一華はその話を信じられないと言った。
「あの人滅茶苦茶忙しかったでしょ」
「いつも漫画描いてね」
「それで地位も収入もね」
「かなりだったわ」
「それで嫉妬するの?」
他の漫画家にというのだ。
「信じられないけれど」
「けれどそれがね」
留奈はその一華に真剣な顔で答えた。
「嫉妬していたらしいの」
「そうだったのね」
「確かに滅茶苦茶忙しくて」
平均一日四時間の睡眠で徹夜も普通だったという。
「地位もお金もね」
「あったわよね」
「もう不動の存在だったけれど」
当時の手塚治虫はというのだ。
「それでもよ」
「忙しかったらそれだけでね」
一華はさらに言った。
「嫉妬する余裕もね」
「ないわよね」
「何かを必死にしていたら」
それならというのだ。
「もう他のことに目がいかなくて」
「そうなってね」
「いじめもしないし大変と思う余裕もなくなって」
「嫉妬だってね」
「しないでしょ」
その感情を抱くこともというのだ。
「それこそね」
「私もそう思うけれど」
留奈はそれでもと言った。
「けれどね」
「あの人はそうだったのね」
「そうみたいよ」
「嫉妬する余力まだあって」
「それでね」
「他の漫画家さんに嫉妬して」
「自分はもっといい作品をってなって」
そう考えてというのだ。
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