廃墟の巨人
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「そうか、ドクロ少佐も敗れたか」
豪奢な椅子に座した男が戦闘員の報告を聞きながら言った。
「ハッ、シンガポールにおいて建設中であった我等の基地はインターポールの手に落ち破壊されました」
戦闘員が敬礼し引き続き報告する。
「あの基地がか。そしてドクロ少佐は今どうしている?」
何処かの地下に造られた部屋らしい。掘り抜かれた岩が露出し松明により灯がとられている。座した男の前には黒檀のテーブルがある。
「御自身の本拠地であるイタリアへ戻られました。傷を癒されていると思われます」
「そうか。それでは暫くの間動けぬな」
「ハッ、残念ながら」
「よし、御苦労。下がって良いぞ。引き続きライダー達と他の者達の諜報を怠るな」
「了解致しました」
戦闘員は敬礼し部屋を後にした。
「ドクロ少佐が生き残ったか。あの女が動いたか」
机の上に置かれたグラスに酒を注ぎ込む。赤い血の様なワインだ。
杯を手に死一気に飲み干す。ワインの香りが部屋に満ちていく。
「さて、これからどうするかだ」
杯を置いた。その手は白手袋で覆われていた。黒いスーツとマントに身を包み首には白スカーフを巻いている。暗い為かその顔はよく見えない。しかしその至る所から異様な光を発している。その光から彼が人でないことがわかる。
「ブラック将軍達も欧州での戦局建て直しに忙しい。インドは壊滅状態だ。鋼鉄参謀も動けぬか」
壁に掛けられている世界地図に目をやる。その中の九つの場所にマークが付けられている。そのういの二つ、欧州とインドにはダーツが刺さっている。
「ダブルライダーが。小癪な真似を」
忌々しげに吐き捨てる。
「そして今度はX3.やはり奴等を何とかしなければいかんな」
懐からダーツを取り出す。シンガポールに射ろうとしたその時だった。
「ムッ!?」
彼がダーツを放つより早く何かが地図に突き刺さった。丁度シンガポールの場所だった。
刺さっているのはトランプのカード。それもスペードのキングである。
「・・・・・・貴様か」
カードが飛んで来た方に憎々しげに顔を向ける。そこに奴はいた。
白い服にマント、腰の左右には剣が吊られている。やはり首から上は見えない。しかし全身から発せられる気が彼が只者ではないことをあらわしていた。
「これは申し訳ないことをした。くつろいでいるところだったか」
不敵さと余裕をこれ以上ない程込めて言う。その口調から自身に対する絶対の自信が感じられる。
「フン、今それは止めた。一体何の用だ」
「足した用事ではないが。聞きたい事があってな」
「聞きたい事?」
言葉尻がピクン、と上がった。
「そうだ。この前ドイツに行っていたそうだな」
以前オオカミ長官と密会した時の話だ。
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