廃墟の巨人
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い」
骨の欠片一つ残ってはいなかった。結城は舌打ちすると小路を後にした。
その結城を上から見下ろす男がいた。黒服の男だ。その右手にはリボルバーが握られている。
「危ないところだったな。奴に我々の事を知られるわけにはいかん。しかし・・・・・・」
男は顔を顰め舌打ちした。
「岩石男爵め、一体そういう作戦指揮をしているのだ」
黒服の男が岩石男爵の作戦に疑問を抱いている頃ベイルートの破壊し尽くされたビルの地下に設けられた基地で奇妙な一団が密談をしていた。
「何ッ、まさか街中で結城丈二を消すつもりだったのか?」
中央に位置する男が思わず驚きの声を挙げた。
オレンジ色のヨロイに全身を包み白いマントを羽織っている。左手には無数の棘が突き出た鉄球があり顔の口の部分以外を兜で覆っている。ヨロイの胸の部分には二匹の蠍が描かれており兜にも蠍かザリガニの如き脚が八本装飾されている。この男の名をヨロイ元帥という。デストロンにおいてその悪名を轟かせた男だ。
モンゴルの奥地に誰にもその名を知られていない謎の一族がいた。その名をヨロイ一族という。モンゴル高原に住みながら馬に乗らず思い鎧でその全身を覆っていた。その鎧はあらゆる武器をはね返し何者をも寄せ付けなかった。一説にはチンギス=ハーンの末裔とも言われるこの一族はやがて奇怪な妖術に手を染め固い外皮や鱗を持つ生物の力を己が身体に取り込むようになった。
その一族の長の家に生まれたのがヨロイ元帥である。彼は自身が長となる為に障壁となりそうな者を次々と抹殺し一族の長となった。そしてモンゴル中を荒らし回り多くの人達を殺していった。
その彼の残虐さと悪辣さは程無くデストロン首領の耳に入った。彼はデストロンの大幹部として迎え入れられることになった。
デストロンにおいても彼はその悪辣さを遺憾なく発揮した。嬉々として非道な作戦を執り行ない罪無き人を嬲り殺しにしてそれを見て楽しんだ。その残忍さはデストロンにおいても随一であった。
また彼は自らの地位に異様なまでに固執した。少しでも自分の地位を脅かしそうな者は次々と陥れていった。その事からも彼は組織内で非常に憎まれ恐れられていた。
「そうじゃ、それが何か悪いのか?」
左手に立つ男が平然と答えた。そのさも当然といったような口調に流石のヨロイ元帥も呆れてしまった。
「悪いも何もあるかっ、もし市民に見られでもしたらどうするつもりだ」
「簡単な事。見た者もついでに始末すればいいじゃろが」
男はまた平然と言った。その態度にヨロイ元帥は匙を投げてしまった。
(やはりこの男には何を言っても無駄か)
ヨロイ元帥がこの男、と心の中で読んだ男は人であり人でなかった。
体型は人のものであったがその上半身はしろと土色の岩石で出来ていた。
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