廃墟の巨人
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イーーッヒッヒ」
答えない。だがそれだけで充分であった。
「フン、相変わらず喰えない女だ。だが一つ忠告しておく。邪魔をしたらただでは済まぬぞ」
ジロリ、と睨みをきかす。その様子が単なる恫喝ではない事をはっきりと表わしていた。
「おやおや物騒さねえ。けどライダーマンの相手をあんた達だけがしていいなんて誰が決めたんだい?」
「何ィ!?」
明らかな挑発だった。男も右足を半歩前へ出した。
「ヒッヒッヒ、いいのかい?どっちかが死ぬ事になるよ」
「クッ・・・・・・」
懐から何かを出そうとした男の腕が止まった。ヘビ女の言う通りだったからだ。生き残った方もただでは済まない。どちらにしても結果は明白だった。
「フン」
懐から手を離した。そして止む無く足を元に戻した。
「やっぱり切れるねえ。じゃああたしの言いたい事も判るねえ?」
「チッ、まあいいだろう。ライダーマンの首は早い者勝ちだ」
「そういう事。じゃあ失敬させてもらうよ。これからの準備があるからねぇ」
そう言うと目から光を発し蛇に変化した。そして瓦礫の中へ隠れていくようにその姿を消した。
「糞っ、蛇風情が。調子に乗るなよ」
ポケットから葉巻を取り出した。忌々しげに咥え火を着けた。そして不機嫌な足取りでその場を後にした。
テロの被害に遭った場所での救助を終えたライダーマンこと結城丈二はアメリカ大学の近くにあるカフェレストランにおいて一息ついていた。
表向きは酒を飲まないという事にしている人が一般的なイスラム教徒はコーヒーを嗜む。異教徒が飲むのも大歓迎である。本質的には現実主義をヒジュラの頃より積極的に取り入れているのがイスラム教である。商人の宗教である彼等は異教徒達に対し口喧しく言う事は無い。イスラムの戒律に従い対応するのみである。従って今ここでコーヒーを飲んでいる結城はいいお客さんなのである。むしろ気前がいいので店の人から喜ばれている程である。
コーヒーを飲み終え英字新聞に目を通しつつ結城はある事に考えを巡らせていた。終わる事を知らぬイスラエルとパレスチナの抗争に奇妙な法則があるのだ。
双方共戦乱には飽いている。双方の強硬派も発言力を持っているがその彼等でさえ何時終わるとも知れぬ争いに辟易しているのだ。
これまでの争いで双方共甚大な被害を出している。人も、その心も大きな痛手を受けた。どの大国も匙を投げようとしている。経済的な負担は最早無視出来ない。和平に至るしか道は無い。しかしそのテーブルに着くや否やテロが起こるのだ。そして抗争がまた続く。それの繰り返しである。何時終わるともしれない。
この抗争を終わらせる為国連は結城丈二に一連の抗争の裏の調査を依頼したのだ。同時に災いの元があったならばその排除をも。これは極秘任務であり彼がこ
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