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金木犀の許嫁
第四十八話 プールへの誘いその五

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「逃げることもあるし」
「その時はね」
「馬に乗れて」
 そうしてというのだ。
「泳げたらね」
「その分逃げられるから」
「水泳はね」
 武士にとってはだ。
「身体も鍛えられるし」
「逃げられるし」
「泳げたら進むことも楽だし」
「攻める時も」
「お水を越えられてね」
 泳いでというのだ。
「それが出来るからね」
「だからよね」
「もうね」
 それこそというのだ。
「それに越したことはないから」
「皆ちゃんとやっていたのね」
「川で泳ぐことが多かったよ」
「プールなんてなかったし」
「昔はね。海かね」
 若しくはというのだ。
「川でね」
「泳いでいたのね」
「お池や湖でもね」
 自然の場所でというのだ。
「そうだったんだよ」
「そうなのね」
「そしてね」
「そして?」
「川だと流れが急だから」
 それでというのだ。
「そこで練習していたら」
「危ないわね」
「よく事故も起こったけれど」
 それでもというのだ。
「そうした場所で泳ぐ分泳ぎの腕はね」
「よかったのね」
「そうだよ、それで忍者は武士以上にね」
「水泳の練習していたの」
「そうだったんだ、泳ぐ機会が多かったから」
 だからだというのだ。
「そっちの鍛錬はね」
「多かったのね」
「そうだよ、ただ本当に水泳部の人達と比べると」
 そうすると、というのだ。
「負けるからね」
「そこまではいかないのね」
「水遁の術が使えたら合格だよ」
「忍者の水泳は」
「それ位だよ、あと水蜘蛛は」
 忍者のこの道具はというのだ。
「使わないから」
「実際は」
「うん、少なくとも真田家と十勇士はね」
 それぞれの家の忍達はというのだ、佐京はその家の一つ猿飛家の跡継ぎとして夜空に言うのだった。
「使わなかったし」
「今もなのね」
「使わないよ、だって使っても」
 その水蜘蛛をというのだ。
「お水の上歩けないし」
「浮かばないわね」
「水蜘蛛って一説には実はもっと大きくて」
 そうであってというのだ。
「ボートみたいに使っていたってね」
「言われてるの」
「一応残っていて」
 その足に付ける水蜘蛛はというのだ。
「うちにもあるけれど」
「使ったことはないのね」
「試しにビート板の上に乗ってお水の上で浮かぶか」
「沈むわね」 
 夜空はすぐに答えた。
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