38話『帰還』
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スンが朧気に目覚める。
「……よぉ、気がついたかよ。気分、どーだ? なんか持って来てほしいモンとか、あるか?」
「いや………今は、何も…………。まだ、動けそうに、ない」
「そりゃそーだろうな。……あれから二日経ってっけど、あと三日は絶対安静だそうだぜ」
「そう、か。………シファと、ビルは」
「床に布敷いてそこで寝てるって、順番にオマエの看病してンだ」
「すまない………戻ってからもこうして、世話ばかり掛けてしまって」
「ンなこた気にすんな。……今はとにかく、何も考えねェで寝とけ。な?」
「……………ありが、とう───」
ランクの言葉を聞き受け、どこか安心したように微笑んだマゥスンは再び深い眠りにつく。
「(うはッ、今一瞬笑ったか……?? しかも、アリガトウって…………)」
「───先程の彼の様子からすると、精神体として異世界で少しは“人間らしさ”というものを学んだみたいね」
「ゲッ、テメェいつの間に……!」
気配すら感じさせず、女賢者エネラが唐突に現れていた。
「アラ……余り声を上げると彼がゆっくり休めないじゃない。……身体の機能が正常に戻れば、〈呪い〉の症状まで再発するのは否めないのよ」
「 …………ッ!!」
妖艶なエネラの絡み付くような独特の話し方に痛い所を突かれ、ランクは言い返せなくなる。
「これから少しづつ、アナタ達……アナタにとってマシになっていくにしても、ワタシにとっては物足りなくなるわね」
「あ、アンタはコイツと……どーゆう関係なンだよ」
「……そんなにワタシと“彼”の仲が気になるの?」
「ち、ちげェよッ」
否定しようにもしきれないランクに冷笑を浮かべるエネラ。
「そうね……アナタにとっては“由々しき仲”とでも言っておきましょうか。───付け加えるなら、アナタの知らない彼を、ワタシは“知っている”という事ね」
「………………ッ」
「教えてあげましょうか。アナタが“彼”に対して抱いている、最大の疑問を────」
「要らねェよ、そんなん」
「アラ……強がっちゃって。そろそろ、失礼するワね」
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