第三部 1979年
戦争の陰翳
国際諜報団 その2
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の管轄下だった。
それは国際共産主義運動の連絡網構築と軍事支援を行っていた観点から、宇宙開発を軍事作戦と認識していた為であった。
人工衛星は高高度偵察機に代わるものであり、衛星による有人飛行は是非とも行わなければならないものだった。
そんな中行われた、1961年のガガーリンの有人飛行の影響力はすさまじかった。
西側のみならず、世界を震撼させたハンガリー動乱の負の記憶を払しょくさせた。
これらの結果は共産主義の優位であると喧伝し、ソ連は膨大な国費を弄しても宇宙開発を進めることとなったのだ。
KGB本部では、毎週定例の幹部会議が行われていた。
スースロフに辞任を迫った検事総長と参謀総長の行動を見て、新たな対外工作をする提案が幹部たちより出されていた。
「同志長官、我が国が月面で敗北したことは、おそらく数日のうちに露見しましょう。
その情報を伝え聞いた時、アメリカ野郎と、日本野郎がどう反応するかです。
木原が動くのは間違いありません。
問題は、木原の事件の調査を、どう妨害するかです」
KGB長官は、黙って幹部の発言を聞いていた。
顔には満足そうな笑みを浮かべ、静かに相槌を打つ横で、幹部たちが思い思いのことを言う。
「木原に、アルファ部隊の精鋭を差し向けましょう」
「いや、近しくしている者を攫って、木原にゼオライマーの秘密を明かすように脅すのです」
「日本野郎を動揺させるために、過激派を使嗾して、都市部で連続爆破事件を起こしたい」
「私は、モザンビーク政府に工作員を送り込み、南アフリカに軍事侵攻をさせ、米国の関心をそらすべきだと思う」
幹部たちの言葉を遮ったのは、モスクワの東洋学研究所の職員の男だった。
東洋学研究所は、その名前とは違って、アジア方面でのKGB工作員の養成所である。
全教員・職員がKGB将校で、生徒の75パーセントがKGB工作員という場所だった。
「フハハハハ」
男は大げさな笑いをして、周囲の関心を集める。
幹部たちは一斉に憤懣を湛え、その60がらみの男の方を向く。
「そんな事では、日本野郎の木原に勝つことは出来ぬわ!」
一斉に幹部たちは立ち上がり、腰に手をあてた。
「人の事を笑うのですから、何か良い考えがおありでしょうね」
「もちろん」
男は軽い笑みを浮かべながら、応じた。
「人間という物は、肉体的に厳しい状態に置かれるよりも、精神的に痛めつける方が答えるものよ」
幹部の一人が詰め寄ると、真剣な表情で尋ねた。
「早くお話しください、その戦略とやらを!」
東洋学研究所の男は鼻で笑った後、概要を語り始めた。
「まず訪日中のハイネマンを言葉巧みに誘惑し、ソ連の戦術機開発計画に参加させる。
人類のためなどと言って、我らの協力者に仕
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