第三部 1979年
戦争の陰翳
隠密作戦 その1
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九條と側室の間に生まれた娘を、穂積が正妻として迎え入れていたからだ。
「おそらくハイネマンを連れ出した件は米国にも漏れるでしょう。
ですが手を打っておきました」
「ほう、どんな手だね」
「福井にある越前海岸の洋上45キロの地点にソ連の原子力潜水艦を待機させています。
小型の高速艇に乗せて、浮上した潜水艦にランデブーし、ハイネマンを引き渡します」
領海等に関する用語として、了解、接続水域、排他的経済水域、公海の言葉がある。
まず、領海は、低潮線から12海里(約22km)の線までの海域で、沿岸国の主権は、領海に及ぶ。
次に、接続海域は領海の外側にあって、24海里(約44km)の線までの海域である。
沿岸国が、自国の領土又は領海内における通関、財政、出入国管理又は防疫に関する法令の違反の防止及び処罰を行うことが認められた水域である。
3つ目に、排他的経済水域は、領海の基線からその外側200海里(約370km)の線までの海域並びにその海底及びその下の事を指す。
排他的経済水域においては、沿岸国に天然資源の探査、開発、保存、海洋の科学的調査に関する管轄権が認められている。
最後に公海は、全ての国家に開放されていて、あらゆる自由が享受されている場所である。
「それで」
「そのまま潜水艦で、ナホトカか、北鮮の清津港に入港するつもりです。
如何に米軍の人工衛星が上空から見張っていても、接続海域を超えれば、手出しは出来ますまい」
自信満々に話すアターエフに、穂積は一抹の不安を感じた。
日本国内には、安保条約に基づいて、大小さまざまな米軍基地があるからだ。
米軍基地の他に、国家安全保障省の通信傍受施設もある。
恐らく乱数表を用いた暗号電文も、解読されているだろう。
「米軍が黙って見ているかね……」
一方のアターエフは安心しきっていた。
在日米軍の中には、多くのKGBやGRUの協力者が潜り込んでいたからだ。
彼等からの通報で、米軍の動きは逐一察知で来ていたのだ。
だから今回の作戦も、米軍は行動を起こさないと予想で来ていた。
「接続水域の外側に、ミサイル巡洋艦を待機させてます。
手を出す馬鹿はいないでしょう」
「警備艇が接近したら……」
穂積はそう言うなり、表情を曇らせた。
だがアターエフは皮肉な微笑を浮かべて、穂積の懸念を軽く一蹴してしまう。
「万が一に備えて、北鮮の元山空軍基地から、mig-21を飛ばす予定です。
向こうの大首領の許可はとっております」
「後は木原だけですか」
深い憂慮を浮かべながら、穂積が漏らす。
それまで黙っていた大野が口を開いた。
「これだけの事をしても奴が動き出さんのは、五摂家の後ろ盾に怖気づいたんでしょう」
「そういう男だっ
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