ダチ
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後
「ふぁああ……」
もしも今コウスケに欠伸をしたことを糾弾するものがいれば、なんて言い訳すればいいだろう。
昼食後一回目の講義を終え、コウスケは空を見上げながらそんなことを考えていた。
連日のフロストノヴァのマスター探しも成果がない。そもそも大学にマスターがいる前提から見直すべきではないかと思案していると、もはや見慣れた学生でない青年を発見する。
「お? ハルトじゃねえか!」
ここ最近ずっと、ある教授の手伝いで大学に出入りしている大学の部外者。
知り合いでなければ、通報とか必要だったのかなと微かに思いながら、コウスケはハルトの肩を叩く。
「よ。今日は結構早いじゃねえか」
「コウスケ」
ゆっくりと振り向いた彼の眼差しに、コウスケは一瞬たじろいた。
虚ろな目。
昨日までの彼とはまるで別人かと思ってしまった。
沈んだ目にも驚いたが、彼の外見を見て見れば、ボロボロの衣服が目に入る。
「お前、どうしたんだよその体!? あちこち傷だらけじゃねえか」
「……パピヨンと、決着をつけた」
彼はそう言いながら、手を上げる。彼の手には、パピヨンが着用していた蝶のマスクが握られていた。
「……!」
「どれだけ追い詰めても、聖杯戦争への参加を諦めなかった。いつ、人へ手を出すかも分からないし……俺が、トドメをさした」
「そうか……」
かけるべき言葉が見つからず、コウスケは彼の肩を叩いた。
「お前、今日は休めよ。教授の手伝いは、今日はオレがやっとくからよ」
「……いや、行くよ。えりかちゃんにも直接このこと報告したいし。それに……」
「それに?」
「……」
それ以上、ハルトは言葉を続けない。
ここまできて沈黙で返事をされても、続きそうな言葉に見当もつかないコウスケは、肩を窄めた。
「まあ、しゃあねえか。もう少し探したら行くけどよ、あまり無理すんなよ?」
「うん」
本当に行くつもりなのだろうか。
心配になるほどふらふらの足取りで、研究棟へ歩いていく。
眉をひそめながら、コウスケはため息を付いた。
「大丈夫っつうから、本人を信用するしかねえか……次は……お? 休講か?」
学生にとってもっとも喜ぶべき情報である休講。その日の講義がまるまる開くのだが、生憎えりかのマスターである教授の手伝いがあるコウスケに、帰宅するという選択肢はない。
コウスケはハルトが去って行った方向へ視線を投げ、後を追いかける。
「おい、ハルト!」
コウスケはハルトが去って行った方___教授の研究棟へ足を向ける。
だが、大学キャンパスの中心である広場で、コウスケは足を止めた。
「お? 祐太? おい、祐太!」
その声に、友人である瀬川祐太は
[8]前話 前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ