第八十七部第五章 外の世界の動きを無視しその三十三
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「勝てません」
「左様ですね」
「はい、そして」
さらに言うのだった。
「併合なぞ仮に我々が併呑する形にしても」
「圧倒的な人口と国力差で」
「出来ません、確かにイギリスはかつて世界帝国となりました」
当時人類史上最大の版図を誇る大帝国であった。
「アジアにアフリカに植民地を持ち」
「まさに日の沈まぬ帝国でした」
「ですがそれは全て技術を持たない相手に出来たもので」
「産業革命で得たそれで」
「相手に技術があり」
そしてというのだ。
「四十倍の人口で六百倍の国力の相手を征服してです」
「植民地にすることは」
「出来ませんでした」
十九世紀のイギリスでもというのだ。
「到底」
「併呑してもすぐに叛乱を起こされていましたね」
「事実二度の世界大戦で衰えますと」
「植民地を失い」
「今の様にです」
「欧州の一国に戻りましたね」
「それでも大国ですが」
この時代でもこのことは変わらない、イングランドはエウロパの大国の一つとして知られている国の一つだ。
「兎角六百倍の相手なぞ」
「どうしても併呑出来ないですね」
「逆にこちらがされてしまいます」
そうなるというのだ。
「連合をエウロパにするのではなく」
「エウロパが連合にされてしまいますね」
「深海魚も鯨は呑み込めませんね」
「とても、実は自分より大きな相手を一呑みにしたなら」
貴族はアランソに応えて述べた。
「それこそです」
「腹の中でどう収めるか」
「まさに命懸けです」
「下手をすれば腹を破られます」
「そうなりますので」
だからだというのだ。
「これは命懸けです」
「まして鯨はですね」
「逆に一呑みです」
そうされてしまうというのだ。
「そうなってしまいます」
「そうです、ですから連合は」
「巨大になり続けてですね」
「そのこと自体をです」
「最大の武器にしていますね」
「巨大であるだけで最大の国防になります」
アランソは強い声で話した。
「見ただけで攻める気も失いますし」
「事実我がエウロパも」
「はい、攻めるなぞです」
「考えられませんね」
「ニーベルング要塞の攻略ですら」
今は敵地であるこちらもというのだ。
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