第七百八十一話 もてるからこそその三
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「まあそれでも言いたい放題の時はね」
「あったか」
「多かったしね」
「随分緩いな」
「それが日本でね」
「かなり言論の自由はあったな」
「江戸時代もそうで。しかもそれは江戸のことで」
幕府のお膝元のというのだ。
「それでね」
「大坂だとな」
「かなり緩やかで」
「好色一代男も残ったか」
「河豚だってね」
この魚もというのだ。
「江戸じゃご法度だったんだ」
「毒があるからだな」
「うん、けれど大坂だとね」
「食べてよかったか」
「事実上野放しで」
そうした状況でというのだ。
「別に食べてもね」
「よかったか」
「それであたってもね」
河豚の毒にだ、そしてあたると死ぬことから大坂では河豚を鉄砲と呼んだのである。そしてこの時代でもこの表現は残っている。
「自己責任だったのよ」
「大坂はそうか」
「犯罪でもしないと」
そうでないと、というのだ。
「奉行所もね」
「動かなかったんだな」
「大坂はね」
「随分自由だな」
「そうした街だったから」
その為町人の街と呼ばれていた。
「西鶴さんもだよ」
「あんな作品書けたんだな」
「そういうことだね」
「何かそこまで聞くとな」
フックは神妙な顔になって言った。
「江戸時代は大坂で暮らしたいな」
「江戸よりもね」
「あんな作品書けるんならな」
「今のウェブ小説もびっくりのね」
「それならな」
「僕もそう思うよ、江戸時代は平和で繁栄した時代だけれど」
この時代の連合ではそう評価されている、二百年に渡る平和の中で元禄それに文化文政と二度も庶民文化が花開いた時代だとだ。
「江戸よりね」
「大坂の方がいいな」
「そう思うよ」
「そうだな。江戸はな」
「幕府のお膝元でね」
「あの幕府時々厳しかったな」
「改革やるとね」
その時はというのだ。
「贅沢禁じてあれこれ言うから」
「そうだな」
「刑罰は緩くてもね」
「言われるのは嫌だな」
「幕府って基本貧乏だったから」
兎角常に財政不足に悩まされてきた政権である。
「改革言うと緊縮財政で」
「贅沢は駄目か」
「それを庶民にも言ったから」
だからだというのだ。
「もうね」
「江戸は生きにくいな」
「その分ね」
「そうだったんだな」
「だからね」
「大坂の方がよかったか」
「暮らすならね」
幕府の締め付けが弱かった分というのだ。
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