暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第235話:道化師の策略
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なるほど拳を握り締めているのが分かる。彼だってあそこで異常が起こっていると知って、今すぐ飛び出したくて堪らないのだ。だがそれが自身の身だけでなく、結果的に奏の身にも危険が及ぶ可能性があると考え理性で行動を押さえている。

 颯人が彼自身も内面で葛藤しているのを悟り、響も荒れ狂う心を拙いながらも必死に抑えようとする。そんな2人の姿に、マリアは小さく息を吐くとあおいに声を掛けた。

「それより、あおい? 頼んでたものはどうなったかしら?」
「少し待って、今……! 司令、マリアさんから頼まれていたデータの検証、完了しました!」

 何やら自分達が預かり知らぬところで交わされていたらしきやり取りに、マリアに近しい切歌に調、セレナが顔を見合わせた。

「データの、検証?」
「何デスかそれは?」
「姉さん、何時の間に?」

 3人からの問い掛けに対し、マリアは正面のモニターをつぶさに見つめながら答えた。

「腕輪の起動時に検知される不協和音に、思うところがあってね。多分セレナ、あなたも何かを感じてくれる筈よ」
「え?」

 マリアの言葉にセレナが何の事なのかと首を傾げていると、朔也が行っていた検証の内容を話してくれた。

「あの音に、経年や伝播距離による言語の変遷パターンを当てはめて、予測変換したものになります」
「言語の変遷パターンを?」

 説明を聞いてもイマイチ何をしていたのか分かり辛い。取り合えずここは見守っておくのが得策かと颯人達が黙っていると、発令所内に件の音声が流れた。最初こそ不協和音でしかなかったが、変換されるとそれは一定のパターンを持つ音楽に近いものである事が分かる。

 その音楽は、特に元F.I.S.に所属していた者達にとっては耳馴染みのあるものであった。

「この曲、何処かで聞いた……」
「何時かにマリアが歌ってたデスよッ!」
「知ってるのか?」

 切歌と調の反応にクリスが問い掛ける。それに対しマリアは、クリス達には視線を向けずに答えた。

「歌の名は『Apple』……大規模の発電所事故で、遠く住むところを追われた父祖が、唯一持ち出せた童歌……」
「私と姉さんを何時も元気付けてくれた詩だった」
「そうだな……マリアもセレナも、施設に居た時からよく歌ってた」

 マリアの説明にセレナとガルドもしみじみと思い出す。決していい思い出のある幼少期ではなかったが、それでもあの頃の出会いがあったからこそ今がある。そう思うとこの曲は彼らに郷愁を感じさせ、心に沁み込む曲に昔を懐かしんだ。

 ただ問題なのはそこではない。何故腕輪の起動時に聞こえる音声が、現代でも尚受け継がれている歌に酷似しているのかと言う事であった。あおいもそこは分からないのか、困惑を滲ませながらこれが間違いなくその曲
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