第六章
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「コンサートの打ち上げで」
「飲んで食ってきたか」
「傍の焼肉屋さんで」
「あれか、近鉄の鶴橋駅のすぐ傍の」
「あのお店です」
「あそこか、あそこはいいが」
ここで妖怪は残念そうに言った。
「傍の本屋と立ち食いうどん屋がな」
「閉店したからですか」
「駅の構内の本屋もな」
そちらもというのだ。
「閉店してな」
「寂しいですか」
「うむ」
そうだというのだ。
「非常にな」
「何処もですね」
琴子も寂しそうに言った。
「駅前は」
「相当な駅でもないとな」
「寂れていますね」
「車道は賑やかになってな」
それでというのだ。
「駅前はそうだ」
「時代の流れでしょうか」
「一言で言うとな」
「そうですね」
「鶴橋もな、しかし残る店は残る」
のびあがりは言った。
「だからそうした店に行ってな」
「食べるといいですね」
「そうだ、だがな」
「焼肉の匂いはですか」
「アイドルとしてはな」
どうにもというのだった。
「あまりな」
「させるなっていうのね」
「どうもな」
「いいでしょ、プライベートなら」
美玖はむっとした顔で言葉を返した。
「焼肉の匂いさせても」
「そういうものか」
「ええ、プライベートならね」
またこう言った。
「いいでしょ」
「昔は違ったと思うが」
「アイドルだって人間でおトイレにも行くし」
「焼肉も食べるか」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「そんなことはよ」
「気にしないか」
「これからも二人で焼肉食べるわ、ただね」
酒で真っ赤になっている顔で話した。
「ちゃんとお野菜も食べてお酒も考えてよ」
「飲んでいるか」
「アイドルだからね」
「守るものは守るか」
「そうしているわよ」
「ならいいか、ではな」
「ええ、じゃあ私達帰るから」
自分達の部屋にというのだ。
「また機会があったらね」
「うむ、会おう」
「その時またのびるのね」
「わしの出来る限りな」
「じゃあそういうことでね」
美玖はそれならと応えた。
「またね」
「お会いしましょう」
琴子も挨拶をした、そうしてだった。
二人は妖怪と別れて自分達の部屋に入った、そして共に歯を磨いてから寝た。朝起きると二日酔いだったのでまずは風呂に入って酒を抜いてついでに焼肉の匂いも落とした。そのうえで一日をはじめたのだった。
のびあがり 完
2024・12・28
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