第三章
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「それで人も多くて」
「カオスだったみたいですね」
「迷路みたいで」
「それが独特の風情があってね」
「そうだったみたいですね」
「駅前がね」
近鉄線鶴橋駅のその下の商店街を一緒に歩きつつ話した。
「何処もね」
「寂れていて」
「それが世の流れでね」
「ここもですね」
「そうなってるみたいでね」
「お店減っていますね」
「そうみたいね、それは寂しいわね」
赤くなった顔で話した、琴子もそうで二人共吐く息は焼肉と一緒に食べた多くのキムチの大蒜の匂いがきつい。
「こうした場所はね」
「賑やかでないとですね」
「駄目よ」
「そうですよね」
琴子もそうだと頷いた、そして。
二人で肩を組み合って支え合って商店街を出た、そこからマンションに帰ろうとしたが。
出たところでだ、二人の前にだった。
何かが出た、美玖はその何かを見て言った。
「何これ」
「何でしょうか」
琴子もそれを見て言った。
「道に何かありますね」
「何か棒みたいね」
「生きものみたいですよ」
「野良犬?違うわね」
「犬にしては大きいですよ」
暗がりの中の黒いものを見て話した。
「どうも」
「じゃあ何かしら」
「足元にいて、あれ」
ここで琴子は気付いた。視線を上げるとだ。
その生きものは大きくなった、まるで伸びるみたいに。
「思ったより大きいですね」
「そうね」
美玖も視線を上げて気付いた。
「どうも」
「何でしょうか、これ」
「妖怪じゃない?」
美玖は泥酔寸前の顔で述べた、琴子はさらに酔っている。
「これって」
「妖怪ですか」
「琴子ちゃん八条大よね」
「先輩と同じですよ」
実は二人は大学に通いつつアイドル活動をしているのだ。
「学部は違っても」
「そうよね、私達の学校って妖怪のお話滅茶苦茶多いからね」
「ふと思いましたね」
「それでこれもね」
「妖怪ですかね」
「よくあるのは狐や狸が化けている」
「それですね」
「どっちでもないぞ」
ここでその何かが言ってきた。
「わしはそうした生きものではない」
「あっ、しゃべったわね」
「それも日本語で」
二人は確かに聞いた。
「言いましたね」
「生きものじゃないってね」
「狐でも狸でもない」
「じゃあ犬か猫でしょうか」
「どっちでもない」
何かはまた言ってきた。
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