アンサンブルを始めよう 3
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アリア信仰は不可侵領域の筈。
悪夢だ。
「結界の張り直しは終わったが。移動先は中央教会で良いのか?」
「おー。よろしく〜」
レゾネクトの言葉を合図に。
フィレスさんが、手拭いを預けたリーシェと手を繋ぎ。
殿下が、獲物を追い詰めた獣みたいな緊張感を伴って、私の隣に並ぶ。
逃げ場は、無い。
虚ろな目に映る景色が、緑豊かな大自然から白い建物の壁に変わる寸前。
「神に悪魔、人間にエルフ、ドラゴンに精霊。この世界は複雑怪奇で本当に面白いな。これからも楽しめそうだ」
殿下が、好奇心と期待で瞳を輝かせる少年の如く無邪気な声で呟いた。
「……はい」
私も、肩の力が抜けていくのを感じつつ、薄く笑って首肯する。
世界は百人百通りな色を織り交ぜ、千差万別の音を複雑に絡ませながら、昨日とは違う今日、今日とは違う明日へと形を変えていく。
それは『彼女』の願いであり、私の祈りだ。
生きている限り、嫌なことも、辛いことも、苦い経験も。
これから先、まだまだ、たくさん控えているだろう。
それでも。
いつか別れの日が来ても、終末の刻が訪れるまでは。
愛しい少女の心が、悲しみで折れてしまわないように。
あなたの生きる時間が、喜びと幸せで満ち溢れたものであるように。
「精一杯、今を楽しみましょう」
…………そういえば。
私は結局、何人分の昼食を作れば良いのでしょうか?
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