アンサンブルを始めよう 3
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その娘の眼前で、父親に口付けた男性について。
私が突っ込んで良いものなのかどうか。悩ましい。
ロザリアがいつ目を覚ますか判らないからか。
殿下の指摘を受けたレゾネクトが、大人しく男性の姿に戻った。
見慣れた姿に、私も安堵の息を吐く。
彼が『彼』の姿であれば、ロザリアが気絶し直す心配もない。多分。
「結界は、どうなっていますか?」
解放された声でレゾネクトに状況を確認すると。
彼は辺りを見回して、何かを探り出した。
「……ああ、状況は大体分かった。俺がロザリアの代わりに閉じておこう。東西の出入口を繋ぎ、里の外周を多重空間で円状に囲めば良いのだろう?」
「世界への影響は?」
「無い」
「では、そちらはお願いします。終わり次第、全員で場所を移りましょう。リーシェとロザリアをこのままにしておくのは忍びないので」
「あ……」
帽子を拾い、ロザリアを抱えて立ち上がった私を見て。
リーシェが気まずそうに後退る。
種族が違っても男性は怖いのか、顔色が下降気味だ。
それに気付いたらしいフィレスさんがリーシェに歩み寄り。
自身の上着から取り出した手拭いで、リーシェの顔を優しく拭う。
「んじゃ、行き先はアルスエルナの中央教会、次期大司教サマの執務室で」
「え」
想像もしていなかった殿下の提案に、体が硬直する。
せっかく遠のいたのに。
「何故、中央教会へ? 私達人間だけでなら、まだ解りますが。リーシェやロザリア達は」
「現代の現在、世界は宗教方面で大混乱になってるんだ。アンタ達に迂闊な言動で存在を匂わされたら、俺達、国家の統治者側も、大いに困るんだよ。予想外の急展開を防止する意味でも、アンタ達の行動はコッチでもある程度把握しておきたい。その為には、情報を制御できる高位かつ無欲な人間との連携が必要不可欠だ。俺が知る限り、あいつ以上の適任者は居ない……と。ああ、そうか。アンタも『生贄』……」
私を見る殿下の目に、生温い温度が混じった。
居た堪れなくなって視線を逸らすが……はた、と気付いて静止する。
彼女関連で『生贄』という言葉の意味を正しく理解できる人間は、彼女の洗礼を受けた者だけだ。
それはつまり。
「殿下も、ですか」
そろりと持ち上げた視界。
殿下の目に『諦め』が宿る瞬間を、私は見逃さなかった。
「ははははは。寄らば大樹の陰だ。観念しろー」
「ふ、ふふふ。ニゲナイデクダサイネ、デンカ」
彼女、本当にアルスエルナ王国の支配者にでもなるつもりか?
まさか、国家的権力者にまで手を伸ばしていたとか。
もう、彼女を止められる立場の人間は、国王陛下しか思い当たらない。
けれど、陛下であっても
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