アンサンブルを始めよう 3
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
にレゾネクトを放置した殿下が、自身の服の袖で唇を乱暴に拭いながら、フィレスさんの隣に並び立った。
殿下の宣告で真っ先に正気を取り戻したフィレスさんが、それでもまだ、戸惑いを隠し切れていない表情で、ぎこちなく頷く。
「あのですね、師範。驚きはあっても嫌悪感とか恐怖は感じなかったから、私はひっくり返せなかったんじゃないかと思うんですが」
「だろうな。お前が根っからの騎士で、こういう方面に疎いのは知ってる。どうせその時は、まさか自分に口付ける異性が存在するとは思わなかった。だから驚いた。程度だったんだろ?」
「はい」
「認めちゃうんだ」
ロザリアが引き攣った顔で一歩下がった。
似たような状況? で、嫌悪以外を感じなかったであろうロザリアには、フィレスさんの反応が信じられないのかも知れない。
「大多数の人間は、出会い頭に口付けなんかされたら、著しく気分を害するモンなんだよ。相手が異性なら尚更な。お前もそのうち解る。つか、解れ。んで、(俺以外には)二度と誰にもさせるな! 俺が不愉快だ!」
「はあ。元より、そのつもりですが……(何故、師範が不愉快に?)」
「ならば良し!」
お二人共、心の声が駄々洩れです。
なんて分かりやすい構図。
殿下の最重要目的とはつまり、想い人がされたことへの仕返しだったと。
アリア信仰や国政に関わる仕事で来たわけではないのだろうか。
「…………男のままで良いのか?」
「へ?」
棒立ちで殿下を見ていたレゾネクトが、小首を傾げた。
「お前の言い分は、見知らぬ異性に突然口付けられた人間の気持ちを考えろというものだろう? だったら、『男』のお前が思い知らせるべき俺は、『女』であるべきじゃないのか?」
「「「「……は?」」」」
(…………あ。しまった!)
いけない! と、焦って足を動かすが。
時、既に遅し。
目が点になった一同の前で、持ち上げられたレゾネクトの右腕が、正面の空間を裂くようにストンッと下ろされる。
その動作で目を奪われた隙に
「これなら条件に合うか?」
レゾネクトの体が。
黒い上下服の輪郭を変えてしまうほど、はっきりと。
成熟した女性の形に変わった。
(実のところ『彼女』の意思を受けて男性になっていただけで、『彼女』と『彼女』を映した『鏡』に、確固たる性別は無いんですよね……)
男性姿のレゾネクトに危害を加えられていたマリアさんや、レゾネクトの娘に当たるロザリアが、こんな事実を知ってしまったら、どうなるのか。
私には想像も及ばなかったので、いつか
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ