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逆さの砂時計
アンサンブルを始めよう 2
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ザリアが怪訝な顔でこちらを見て、鼻で笑った。

(……以心伝心?)
「お前が単純すぎて分かりやすいだけだっての。良心の呵責に苛まれるのはザマーミロだけど、また逃げ出したいっていうのは絶対に許さないからな。死ぬまで放さないし、離させない。解ってるよな?」
(はい)
「なら良い」

 本当に……彼女には、死んでも敵いそうにない。

「で。答えは? お前自身は、どうしたい?」

 うつむいた頬を両手で包んで掬い上げ。
 恐怖に揺れる薄い金色の目を、正面から覗き込むロザリア。
 長い沈黙の後、エルフの少女は

「……………………………………じゃ……っ」

 今までで一番大きな滴を落としながら

「いやじゃ、嫌じゃ嫌じゃ! 我はあのような扱いなど受けとうない??」

 助けて と、叫んだ。

「任せとけ」

 ロザリアは立ち上がり、九個の球体を右腕の一振りで里中にばら撒いた。

「お前の仲間も体の時間を止めて意識を結界の外へ放り出した。今日以降、しばらくの間はエルフ族の大半を冬眠させる。その間に、お前はお前自身が納得できる生き方を探すんだ。結果、この里に戻ってくるも良し。まったく別の場所で新しい生活を始めるも良し。自分の意志で、好きな道を進め」

 ロザリアに支えられてよろよろと立ち上がったリーシェは。
 陰りを見せながらも決意を窺わせる強い眼差しで里を見渡し、深く頷く。
 肉親に子供を産めと望まれていた点で、自身とよく似た境遇のリーシェを助けられたからか、ロザリアの横顔がとても満足気で、私まで嬉しくなる。
 しかし。

 十三個からリーシェを引いて十二個。
 更に九個を引いて、三個残った球体。
 エルフ族の総人数は十二人だった筈。
 数が合わないような?

(それ、残りの三個には誰が入っているのですか?)

 私がふよふよ漂う球体を指して尋ねると。
 微妙な表情で振り向いたロザリアが、自身の頬を掻く。

「んー……。一つは、エルフ族の中で唯一まともなネールってヤツ」

 ネール。
 前回、凄まじい敵意を放ちながら案内役を務めてくれたエルフだ。

「全員を行動不能にしたら、里にある畑が荒れ放題になっちまうだろう? 勿体ないから留守番させようと思ってさ。本人も話を聴いて同意してるし、私達が里を出た後で解放するつもりだったんだけど……一応、出て行く前に会っておくか? リーシェ」

 コイツだけはお前の扱いに疑問を持ってたぞ、と前置いた上で尋ねられたリーシェは、一瞬表情を強ばらせ、頭を横に振る。

「今は……会えぬ。顔を見るのは怖い。だがもしも、我が帰ってきたら……一番最初に会うてくれるか? 兄上」

 手前へ降ろされた球体におずおずと触れて、ぎこちなく微笑むリーシ
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