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逆さの砂時計
アンサンブルを始めよう 2
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「(??)」

 肩越しに振り返った途端、不敵に笑うロザリアが右手を掲げ。
 いつの間にか私達の頭上に浮かんでいた薄い緑色に輝く十三個の球体を、ロザリアの周りに引き寄せる。
 人間の成人女性を余裕で包み込める大きさの、重さを感じさせない球体。
 それらの内一つが、ロザリアの手前で風船のように破裂し。
 その中から真っ白な……長様とまったく同じ容姿のエルフが滑り落ちた。

「あ、……あぁ……」

 膝から地面に落ちたエルフは、ロザリアの左腕に力無くしがみつき。
 生気が消え失せた顔で、聞き覚えがある声を小刻みに震わせている。

(……もしかして……リーシェ?)

 見た目には判断しにくいが、声の感じからしてリーシェで間違いない。
 現代のエルフ族の中で唯一の女性体だという、三百歳の少女(?)。
 しかし、前に会った時とは、明らかに様子が違う。

「リーシェに何を!」

 異変に気付いた長様が声を荒げた、その瞬間。

「ひっ! やっぁ、っぐ、うぅ…… げふっ かはぁっ」

 長い耳を押さえてうずくまったリーシェが嘔吐した。
 まるで、長様の声を拒絶するように。

「リー……」

 困惑した長様が、咄嗟に手を伸ばそうとするが。

「いやああっ?? や……っ、ご、ごめんなさっ……ごめんなさいぃ!」

 リーシェは悲鳴を上げ、長様から逃げてロザリアの腰に抱きついた。
 涙やら鼻水やらで汚れた顔をロザリアのワンピースに埋めて泣き喚く様は痛々しく、理解の範疇を超える何かと遭遇して恐慌状態に陥ってしまった、幼い子供を彷彿とさせる。
 出会った当初の元気一杯なリーシェが嘘みたいだ。

「っ、彼女に……リーシェに何をした??」
「大声を出すなよ、猿山の大将。リーシェが余計に怯えるだろ。生憎、私は特に何もしてない」
「何もせずに、彼女がそうなるものか!」
「お前らじゃあるまいし、女子供に危害を加えて喜ぶ趣味はねぇよ。ただ、お前らエルフがリーシェに何を望んでるのか教えてやるっつって、母さんがバカ親父にされたこと、バカ親父が人間の女達にしてきたこと、私や人間の女達が、人間の男共や悪魔共やべゼドラにされてきたことを、()()()()()()()()()()()()()()()()見せてやっただけだ」
「なっ……??」

 動揺した長様が言葉を詰まらせ、勢いよく立ち上がる。

 ……立てたんですね、長様。
 動けないのかと思ってました。

「なんという、ことを……! リーシェはまだ!」
「エルフの年齢では幼いほうだって? はっ! 笑わせてくれる」

 そうやって、大切にするフリで極限まで
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