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逆さの砂時計
インナモラーティは筋書きをなぞるのか 2
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の内側で、腰帯に戻される(なまくら)な剣。
 見事です、師範。

「その場合、生まれた子供は十中八九、ただの人間だよな」
「神の力を潜在的に引き継ぐ可能性は大いにありますが、表層的には普通の人間でしょうね。私が把握している限り、私の一族には代々普通の人間しか生まれてませんから」

 壁に手を当てて歩きながら何かを探る師範が、ある一ヵ所で立ち止まり、壁をぐっと押し込んだ。
 すると、大人一人分に相当する範囲の壁が四角い扉となって外側に開き。
 小さな物音一つだけで、街の外と中を繋いでしまった。
 外に積もってる雪は、壁の上部に張り出した横長な見張り台のおかげで、扉の開放を妨げるほどの量にはなってない。

 緊急避難用の出入口?
 形状からして、内から外への一方通行か。
 こんな仕掛けがあるなんて知らなかった。
 別の場所にある抜け道なら、領主から聴いてたんだけど。

 側頭部強打で昏倒した、盗賊と思われる四人を素早く引きずり出し。
 壁を元に戻した後、見張りが気付かないように、すぐ近くで繁ってる森の少し奥へと、まとめて放り込む。
 周辺の雪に残った足跡を消しておくのも忘れない。

 酷いと恨むなかれ。
 人間、誰かに危害を加えるなら、相応の危害を加えられる覚悟も必要だ。

 恩には恩を。
 無関心には無関心を。
 害意には害意を。
 当然の報いでしょう?

 街を離れ、サクサクと鳴る雪原を山岳方面へ。
 しばらくの間、無言で進み。

「……そんじゃ、やっぱり俺にも可能性はあるんだな」
「は?」
「神化する可能性」

 ピタッと止まる。

「何を、お考えで?」

 私の上ずった声に振り返った師範は。
 上機嫌を隠そうともしてない顔で、とんでもないセリフを繰り出した。

「俺の心臓を退魔の力で貫いたら、お前と同じになれるかもなって」
「…………っ??」

 信じられない発言に息を詰まらせた、瞬間。


『くぅぉおんの、おおバカモンぐぁああああああ────っっ!』


「ぃでっ?? な、っんだぁあ??」

 私の背後から、一陣の風が凄まじい勢いで(はし)り抜けた。



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