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逆さの砂時計
インナモラーティは筋書きをなぞるのか 2
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 会ってたとしても、数千年前の繋がりが人間側に残ってるとは思えない。
 子孫説は、当たらずとも遠からずな気がするのだけど。

「それより、フィレス」
「はい」

 石造りの深い水路をさらさらと流れてる生活用水を横目に、両腕を広げて五段程度の低い階段をひょいっと飛び降りる師範。
 首筋で一つに束ねてある長い金髪が宙を泳ぎ。
 その中の数本が、右から左へと()()()なびいた。
 靴裏と地面が接触すると同時に、右手側の狭く真っ黒い建物の隙間から、何かが落ちたような……あるいは、倒れ伏したような物音が聞こえてくる。
 うん。
 ()()()()()()()()()でなくて良かった。

「お前、力を封印してる状態だと死因も普通の人間と変わらないんだよな」
「ええ。飲食を断てば衰弱で死にますし、海や川で溺れても窒息死します。致命傷を与えられた末に放置されれば、もちろん死にます。出血多量でも、まず助からないでしょう。万が一死病を罹患(りかん)した場合も同様かと」

 物音がしたほうには一瞥(いちべつ)もくれずに歩いていくと。
 今度は、頭上から大きな皮袋が降ってきた。
 歩調を速めてかわしてみれば、私の背後でズドン、バラバラバラ! と、けたたましい音を立てて路上に散らばる、大量の()()
 音の感じからして、小石だろうか?
 石畳が壊れてたら大変だ。無許可で出歩く私達では役場に報告できない。
 配達業者達が早朝の仕事を始めてうっかり負傷する前に、夜警が気付いて注意してくれれば良いんだけど。

「覚醒と睡眠の比率が身体に与える影響は?」
「先日からの実感では、人間とまったく同じです。過度な睡眠や寝不足は、体と思考を鈍らせます」

 街をぐるりと囲んでる石壁へと近付くにつれ、物陰から飛来する矢だの、足元にピンと張られた細い縄だの、子供の悪戯か? と疑いたくなる幼稚な罠の数々が、勢いを増して次々に襲ってくる。
 よほど構ってもらいたいらしい、が。
 こちらに付き合う義理は微塵も無いので、(ことごと)く無視して先を急ぐ。

「人間との生殖は?」
「可能です。私か相手の生殖機能に、なにかしら重大な欠陥がない限りは」
「お、お前ら!」

 壁沿いでも特に人の気配がない場所を選んで来たのは分かるが。
 天を突くような高い壁しかないここから、どうやって外へ出るのだろう?
 と、師範の背中を黙って眺めていたら。
 物言いたげな男四人が現れて、私達を円く囲い込み。

「い、いったい、なにものぐぁっ!」
「ぎゃっ」
「ぐぉ」
「ふぐ……っ」

 私が腰を屈めた途端、放射線状に吹っ飛んだ。
 ふわっと広がった黒布
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