Side Story
少女怪盗と仮面の神父 56
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話し相手ではなく、次期大司教の補佐に相応しい人間の育成です。手助けは必要ありませんが、私が貴女の隣に立つその日が来るまでは、何があってもずっと見ていてください。お願いします」
「……ただ見ているだけで良いの?」
「はい」
誰かの成長を傍らで見つめ続けるのは、不安で見ていられなくなったり、もどかしさのあまり手を出したくなったり、飽きたりと、実は結構難しい。
だからこそ、誰かが見てくれているという事実は、自分の足で歩く為の、確固たる力になる。
いつか尊敬する人達の元へ辿り着き、更に先へ進む。
その為の力に。
「……真に強く気高き者、ミートリッテ=ブラン=リアメルティ。貴女に、女神アリアの御加護があらんことを」
威圧的な貴族の令嬢でも、他人をからかって遊ぶ恐ろしい女性でもない、次期大司教としての厳粛な空気を全身に纏ったプリシラが、自身の胸元よりやや上辺りで、左の手のひらをミートリッテに向けて翳す。
上位の聖職者が下位の聖職者へと贈る祝詞だ。
ミートリッテは上半身を軽く折り、黙してそれを受け止める。
「本心から、貴女の成長を楽しみにしているわ」
「……はい。精一杯、努めさせていただきます」
上体を起こし、再度同じ顔を見合わせる。
しかし、どちらの顔にも、笑みはなかった。
過去、南の地を駆け回ったすばしっこい山猫はもう、どこにもいない。
風に乗った三つ葉は大地の中心へと降り立ち、やがて、見渡す限り一面を鮮やかな緑色に染め変えるだろう。
遠く離れた愛しい者達へ届きますようにと、願う心そのままに。
……ところで。
コーヒーの実がぶつかってきた時に聴こえた、あの偉そうな女性の声は、結局なんだったのか。
村に居る間、アーレストに何度か確かめてみたが。
そんな声は知らない、としか返ってこなかった。
過ぎていく時間の流れと共に、自分でも本当に聴こえていたのかどうか、自信が失くなっていく。
(やっぱり、幻聴だったのかなあ)
ミートリッテは、無言で自分の頬を掻きながら。
白いバルコニーが映える、くっきりした群青色の空を見上げた。
▽少女怪盗と仮面の神父・こぼれ話【とある見届け役の嘆き】
せっかく作ったエサ場が、またしても人間に奪われた。
バーデルはともかく、こっちは自分から知らせたも同然だし、仕方ない。
仕方ない……、の、だが……っ!
あの娘!
エルナとそっくりな容姿、第五号のミートリッテ!
あれは赦せん!
誰が偉そうだ、誰が!
夜の教会で会話のきっかけを作ってやったり、殺気を遮断してやったり、助言してやったり、アーレストに常時掛けてある防音障壁を一時的に解いて協力してやっ
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