Side Story
少女怪盗と仮面の神父 56
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っともないだけ。なので、後悔した時は、それから先をどう生きるのかを考え直します。そして、死ぬまで後悔をくり返します」
「終わりがない後悔を続けるの? 一生?」
「はい」
「そう……」
「! プリシラ様?」
固く閉じた蕾も綻ぶような、温かい笑みを浮かべ。
紅を乗せた柔らかい唇が、戸惑う自分の額に触れた。
「ようこそ、アルスエルナ中央教会へ。貴女を歓迎するわ、ミートリッテ=ブラン=リアメルティ第一補佐。さっきも言った通り私は貴女を助けない。でも、話し相手にはなってあげる。貴族教育や事業で追い詰められた時は、私を相手に愚痴を溢せば良いわ」
名前の呼び方と、笑顔の質が変わった。
本当の意味で迎え入れられたのだと悟り、嬉しいような恥ずかしいような照れくさいような、そわそわした気分に襲われる。
でも。
「謹んで遠慮させていただきます」
「あら、どうして?」
「その……弱みにされてしまいそうで、すっごく怖いから」
「まあ! 聡い子は好きよ」
(否定しないし!)
「逃げ惑う獲物を上から眺めるのって、とても楽しいわよね」
(獲物認定されてるし??)
誰だ。
こんな危ない女性に実権を握らせた奴は。
怒りたいから、ぜひとも出て来てもらいたい。
「ふふ。冗談はさておき……」
(本気しかなかったよね、今)
「貴女には本当に期待しているの。私も司教になって日が浅いし、急がせるつもりはないけれど。貴女が私の隣に立って支えてくれる日を、この場所で心待ちにしているわ」
「っ……」
白く細長い指先が、自分の前髪をふわふわ撫でる。
優しくて温かくて……まるでハウィスに撫でられているみたいだ。
心地好さで頬に熱が集まる。
「……プリシラ様、私」
「二代続けて同じ顔の大司教って絶対波乱を呼ぶと思うの。主に上層部で。こんな面白い話、見逃す手はないわよね!」
「帰って良いですか?」
「ダメ」
「ですよね」
(ごめん、ハウィス。愉快犯と貴女を重ねたことで、罪悪感が半端ないよ)
目の前で微笑む人物に振り回されている未来の自分が容易に想像できて、地味に辛い。頭がくらくらしてきた。
中央教会に足を踏み入れたばかりで何も為さないまま早々と後悔しそうになってるが……ふるふると頭を横に振り、気持ちを入れ替える。
(ハウィス達が私の支援を待ってる。私はここで、私ができることを……、私がやらなきゃいけないことを、しっかりやらなくちゃ)
「プリシラ様」
両手で拳を握り、どうやら自分の存在で遊ぼうと企んでいる直属の上司をミートリッテが見据えると、プリシラは「ん?」と頭を傾げた。
「愚痴は……たまには言っちゃうと思います。けど、私が貴女に望むのは、
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