Side Story
少女怪盗と仮面の神父 56
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リッテは、袋状になってる右の袖に左手を突っ込み。
内側に縫い付けたポケットから、白いハンカチで包んでおいた四つ折りの書簡を取り出し、プリシラへ渡す。
「それは言い得て妙ね。城でわずかでも心を休められたのは、後にも先にも王妃陛下に保護されていたアーレスト一人だけだと思うわ。あの場所には、所属違いの『影』達が昼夜問わず跋扈してるから」
「やっぱり。一晩中、四方八方から見られてる気がしたんですよねえ……。いつ襲われるかと、ヒヤヒヤしてました」
白地に黒いインクで記された内容と赤い紋様を確認したプリシラは、一つ頷いた後、書簡を再度四つ折りにして自らの左袖にしまい込んだ。
これでミートリッテも、やっと一息吐ける。
「それ、半分くらいは『影』じゃないし、襲うの意味が違うと思うわ」
「へ?」
「セーウル殿下に感謝なさい。貴女よりずっと深刻な寝不足状態で、今頃はふらふらになってるわよ。彼」
「?」
「ふふ。こういう話って、他人事だからこそ面白いのよね」
ころころと笑いながら「頑張りなさい」と言われても、意味が解らない。
怪訝な顔を傾げるミートリッテに、プリシラは真剣な目を向ける。
「リアメルティ領内にある大森林の開拓権を寄進する旨、中央教会で正式に受領しました。以後大森林に手を加える際は、誰のどのような目的であれ、必ずアリア信仰を通していただきます。土地そのものに手を出せないなら、権利を遠ざけてしまえ、なんてね。やるじゃない、ミートリッテ嬢」
「バーデルの命綱をぶった切る発見ですから……国境付近に置いておくのは危ないと思っただけです。実際、発見者の私に密輸罪を吹っ掛けて大森林の所有権まで主張するくらい必死でしたし」
コーヒーノキは、西大陸南部が原産の植物だ。
その果実から採れる種子を焙煎した品は、先の大戦以前から中央大陸にも少数ながら輸入され、富裕層の間でのみ高値で売買されていた。
が。
戦後、バーデル王国の最南部でも、自生するコーヒーノキが発見され。
国を挙げての栽培計画が成功を収め、それが近隣国へと広まった途端。
中央大陸全土で需要が一気に高まった。
生きたコーヒーノキの本体と果実、その種子は、必然的にバーデル王国の国有財産となり、現在は他国での栽培阻止……
要はバーデル王国の利益保持の為、国外への持ち出しを、どんな理由でも極刑付きで全面禁止にしている。
大森林で額を打った団栗が、未熟なコーヒーの生果だった。
そうと知った瞬間には、本気で死を覚悟したものだ。
自分のあやふやな記憶と証言を頼って、一緒に未開拓の森奥を探し回り、複数の場所で自生・成熟していたコーヒーノキと果実を見つけ出してくれた騎士達は、正真
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