Side Story
少女怪盗と仮面の神父 53
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てられていたこと。バーデルの暗殺組織に拾われた後、あなたがどんな暗殺術を学んで、どんな経路でシャムロックの情報を掴んだのか。……正直、あなたがエルーラン王子に斬られたあの時、暗殺者のクセにどうして人前に出てきたんだろう、バカだなあって思った。でも、ああするしかなかったんだね。あなたは、女性……だったから」
簡単な話だ。
イオーネが殺したバーデルの貴族は、バーデルの王族にも疎まれていた。
王族の暗部だった暗殺組織は、彼の貴族を暗殺するつもりで屋敷に忍び、意図せぬ殺害現場を目撃した。
手柄を横取りされたと雇い主に知られるのは面白くないし。
標的だった貴族の立場を考えると、諸々の後処理も非常に面倒くさい。
それに、貴族を殺した女はどう見てもアルスエルナ人だ。
バーデル人が嫌い、憎み、見下す、アルスエルナの『女』。
拾って仕込めば使い物になる。
果たしてイオーネは前首領の囲われ者となり。
幾人もの『男』の心臓に短い刃を突き立てる女暗殺者となった。
標的になる男は基本、バーデルの王族が邪魔と見なした有力者ばかり。
当然、その屋敷には商人も出入りする。
さていつ手を下そうかと逢瀬を重ねていれば、高価な品物を手放す哀れな隣国の少女の話を聴く機会も、まるで必然かのように前触れなく訪れた。
その時点で新たな義賊の存在に気付き、その活動がアルスエルナにどんな影響を与えるか正しく理解できたのは、おそらくバーデル国内ではイオーネただ一人。
王侯貴族が少女に関心を持って余計な手出しをしなければ、何も知らない商人達は少女から買い取った品物の売買を続けるだろう。
結果、義賊に関するより多くの情報を、イオーネの元へ搬送してくれる。
だからこそ、前首領を殺して組織を乗っ取り。
バーデルとアルスエルナの国境付近で、商人達の口を封じていた。
両国の敵愾心を効果的に煽る為……確実に手が届くと確信を得るまでは、バーデル軍にも隠す必要があったのだ。
イオーネ自身の情報も、シャムロックの情報も。
「……どうして、こんな世界、なんだろうね」
隙間に両手の指先を入れて、成人男性の手首並みに太い鉄格子を掴む。
額を寄せても音を立てない鉄製の境界線は、見た目以上に頑強だ。
丸腰のイオーネでは決して破れない。
その事実で得られたのは安心ではなく、悲しみだった。
「人間は需要が高いものに集るんだよ。需要がなければ供給はされないの。昔からバカげてる、汚らわしいと言われてるのに結局くり返すってことは、誰かが自分の欲求を正当化して満たす為に、需要とかいうふざけた価値観をばら撒いてるんだよ。弱者にはそうするしか生き延びる術が
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