Side Story
少女怪盗と仮面の神父 51
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在で、命すべては救えない。
けど、近くに居る誰かの手を握る努力くらいなら誰にだってできるんだ。
そう……誰にだって。
「自分以外の凍えてる誰かを、無条件で抱きしめてあげる。抱きしめられた誰かが、別の誰かに温もりを分けてあげる。そうやって、最初に抱きしめてくれた人へ、もう一度温もりが巡るまで、みんながみんなで支え合うの」
手を貸すことを恥じたり、怖がったりせず。
誰かに与えられたことを素直に感謝し、受け入れて、次へと繋げる。
そうやって、嬉しいや楽しいや温かいを、みんなで共有するの。
「誰だって自分の生活で手一杯だもん。簡単じゃないのは百も承知だよ? いきなり「助けてあげようよ」なんて訴えたって「そんな余裕はない!」で一刀両断されちゃうのは分かりきってる」
けど、みんながみんな、誰かの窮状を見て見ぬフリしてるワケじゃない。
私が諦めずに手を伸ばし続けていれば、自分も……と思ってくれる人が、少しずつでも増えるかも知れない。
そうなれば、助かる命もぐんと増える。
同じ時間を、よりたくさんの人と一緒に生きていけるの。
「具体的な方法は、実務に携わってみなくちゃ、なんとも言えない。でも、いつかきっとそれが自然なことだと思える世界へ導いてみせる。ハウィスが選び取った答えを、私が世界中で体現してあげる!」
戸惑うハウィスの両手を、ミートリッテの両手で包み。
うつむいた額に、こつんと当てる。
(イオーネが聴いてたら、綺麗事だ寝言だふざけるなって、嘲笑うか喚くかするんだろうな。実際、即効性に期待できる答えじゃないし。現時点で案も策も無いなら、理想論と何が違うのかって話だよね。そこは否定できない)
獰猛な目つきで襲いかかってくる女性の姿が目に見えるようで、首筋がちょっとだけひんやりした。
しかし、忘れてもらっては困る。
ミートリッテとハウィスは。
エルーラン王子とブルーローズも、元々は赤の他人だった。
偶然と必然が複雑に絡み合って、現在の形に落ち着いただけ。
なら、ハウィスの答えは実現不可能な夢物語でも、机上の空論でもない。
どんなに果てしない道程でも、叶えようと努力し続ければ、必ず手が届く『現実』だ。
問題は、その距離をいかにして短縮させるか。
やはり、まずは身近な所から始めるしかあるまい。
(そうだね、イオーネ。貴女の言葉も正しい。罪悪感で膝を抱えていたって誰も何も得られないし、どこへも進めない。得られる物が一つも無い行為に執着しても時間の無駄。無意味だ。私達が閉ざしてしまった道だからこそ、私達自身の手で切り拓くしかない。これはその第一歩。どこの誰であっても私達の現実を否定させはしない)
あ
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