偽善者
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くっくと肩を揺らし、点を仰ぐ。
「つまり、俺にはもう生き残る術はないということだな!?」
「……」
ウィザードは、右手を天に突き上げる。
丁度パピヨンが投げ上げたウィザーソードガンが空から帰還し、彼の手に収まった。
「……俺には、お前が長生きする手伝いはできない。むしろお前の願いを邪魔することしか、俺にはできない」
「ああ。……分かっているさ」
「……ごめん」
「謝るなよ。偽善者。俺は、自らの短命を諦めていない。お前を倒し、参加資格である令呪を奪うことも考えている」
「ここまで来ても……参加を諦めるつもりは、ないんだな?」
ウィザードはゆっくりと、ウィザーソードガンの手を開く。再び流れだす呪文詠唱を聞き流しながら、パピヨンは口角を吊り上げた。
「ハ……ハハ……ハハハ! ニアデス・ハピネス!」
パピヨンは翼を広げ、後方へ跳ぶ。彼の翼から鱗粉が落ち、それが蝶となってウィザードを襲う。
動かないウィザードへ容赦なく突き刺さっていく爆発。それは、炎のウィザードでも耐えられない威力に違いない。
ウィザードは避ける動作を見せない。
そのまま全ての蝶を受けるが、爆発が晴れたころには。
変わらない魔力詠唱を続ける、ウィザードの変身者___松菜ハルトの姿が、そこにはあった。
「……お前の願いは……もう、終わりにしよう」
彼は、左手に付けたままのルビーの指輪を、ソードガンに読み込ませる。
『フレイム スラッシュストライク』
「……」
炎の中、ひたすらに黙っていたウィザードの変身者。
そして彼は、静かに重い口を開く。
「……何か言い残すことは?」
無数の魔法陣がウィザーソードガンの各所を迸る。ドラゴンの形をした炎は、よりその力を示すように大きくなっていく。
そして。
「後悔するなよ? 偽善者」
「俺はとっくに……見滝原に来る前から偽善者だよ」
『ボー ボー ボー ボー』
そして振るわれる、深紅の斬撃。
それは、例えメダルの力で強化されていたものだとしても変わらない。
体の弱いパピヨンの耐久力を大きく上回るものだった。血のかわりに、ドバドバとメダルが零れ。
最後に、にいっと笑みを見せつけ。
錬金術によって生まれたホムンクルスは、爆発したのだ。
そして散らばるメダルと、パピヨンの代名詞たる蝶の仮面。
それはしばらく工場内を彷徨った後、ウィザードの変身者の手に収まる。
仮面をギュッと握りしめた彼の言葉を、パピヨンの意識は聞くことはなかった。
「永遠の命なんて……あるわけないだろ……!」
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