暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
偽善者
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

 くっくと肩を揺らし、点を仰ぐ。

「つまり、俺にはもう生き残る術はないということだな!?」
「……」

 ウィザードは、右手を天に突き上げる。
 丁度パピヨンが投げ上げたウィザーソードガンが空から帰還し、彼の手に収まった。

「……俺には、お前が長生きする手伝いはできない。むしろお前の願いを邪魔することしか、俺にはできない」
「ああ。……分かっているさ」
「……ごめん」
「謝るなよ。偽善者。俺は、自らの短命を諦めていない。お前を倒し、参加資格である令呪を奪うことも考えている」
「ここまで来ても……参加を諦めるつもりは、ないんだな?」

 ウィザードはゆっくりと、ウィザーソードガンの手を開く。再び流れだす呪文詠唱を聞き流しながら、パピヨンは口角を吊り上げた。

「ハ……ハハ……ハハハ! ニアデス・ハピネス!」

 パピヨンは翼を広げ、後方へ跳ぶ。彼の翼から鱗粉が落ち、それが蝶となってウィザードを襲う。
 動かないウィザードへ容赦なく突き刺さっていく爆発。それは、炎のウィザードでも耐えられない威力に違いない。
 ウィザードは避ける動作を見せない。
 そのまま全ての蝶を受けるが、爆発が晴れたころには。
 変わらない魔力詠唱を続ける、ウィザードの変身者___松菜ハルトの姿が、そこにはあった。

「……お前の願いは……もう、終わりにしよう」

 彼は、左手に付けたままのルビーの指輪を、ソードガンに読み込ませる。

『フレイム スラッシュストライク』
「……」

 炎の中、ひたすらに黙っていたウィザードの変身者。
 そして彼は、静かに重い口を開く。

「……何か言い残すことは?」

 無数の魔法陣がウィザーソードガンの各所を迸る。ドラゴンの形をした炎は、よりその力を示すように大きくなっていく。
 そして。



「後悔するなよ? 偽善者(人殺し)
「俺はとっくに……見滝原に来る前から偽善者(人殺し)だよ」



『ボー ボー ボー ボー』

 そして振るわれる、深紅の斬撃。
 それは、例えメダルの力で強化されていたものだとしても変わらない。
 体の弱いパピヨンの耐久力を大きく上回るものだった。血のかわりに、ドバドバとメダルが零れ。
 最後に、にいっと笑みを見せつけ。
 錬金術によって生まれたホムンクルスは、爆発したのだ。
 そして散らばるメダルと、パピヨンの代名詞たる蝶の仮面。
 それはしばらく工場内を彷徨った後、ウィザードの変身者の手に収まる。
 仮面をギュッと握りしめた彼の言葉を、パピヨンの意識は聞くことはなかった。

「永遠の命なんて……あるわけないだろ……!」
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ