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Fate/WizarDragonknight
偽善者
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ハピネスの副産物に過ぎない。
 ニアデスハピネスの本領。それは、黒色火薬(ブラックパウダー)の操作能力。それがメダルの力で強化された今、もう蝶の形のみに拘る必要はない。
 蝶の羽は霧散され、巨大な綱となり、ウィザーソードガンを掴まえる。

「!」
「うるさい武器は、消音にしてもらうに限るよ!」

 パピヨンはそのまま、火薬の糸を操りウィザーソードガンを上空へ投げ捨てる。
 虚空へ星となったウィザードの得物をしり目に、パピヨンは丸腰の彼へ手刀を放った。
 彼の攻略法。それには一にも二にも、魔法を使う隙を与えないこと。
 威力よりも速度を重視し、パピヨンは手刀を放ち続ける。
 武器を持たないウィザードは、当然防戦一方になるしかない。だが。

「何!?」
「捨て身で来るとは思わなかったでしょ」

 左手でパピヨンの手刀を掴まえながら、ウィザードは言った。すでに彼の胸を抉る左手だ。彼へのダメージは相当あるに違いないが、それを甘んじて受けることを選んだのだ。おそらくその面の下では、笑みを浮かべているに違いない。

「ぐっ……放せ!」

 パピヨンは自由な左手と、着火できる蝶たちで、ウィザードの体から火花を散らさせる。
 だが、どれだけダメージを与えたとしても、彼の右手は決してパピヨンを話すことはなかった。
 そして、ウィザードが見せつけるように右手にした魔法。

『ルパッチマジックタッチ ゴー』
「なっ……!?」

 その音声が流れたころには、もうパピヨンに彼を止める手段はなかった。

『チョーイイネ キックストライク サイコー』

 彼の足元に広がる、深紅の魔法陣。それはすぐ、その右足に炎の魔力を与えていく。

「し、しまっ……!」
「だああああああああああああああああああああああっ!」

 そして放たれる、重い蹴り。
 本来のストライクウィザードとは違い、ゼロ距離の右足蹴り。威力は低くなるが、右手を掴まれている以上、パピヨンに回避する手段はない。

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 体に大きな魔法陣が刻印され、爆発が引き起こされる。
 大きく吹き飛ばされ、地面を転がるパピヨン。その体からは、ポロポロとメダルが零れていく。

「ばかな……!? ここまで……!?」
「もう、終わりだよ」

 ウィザードはメダルを掻きわけながら、パピヨンに歩み寄って来た。

「もし君が参加者で、俺が戦いを止めるつもりがなかったら、次の一撃で君は終わる。それは分かってるよね?」
「ホムンクルスだから、俺は聖杯戦争に参加できない……力づくで聖杯を奪おうとしても、お前のような化け物に阻まれる……」

 パピヨンには、もうウィザードの声は聞こえていなかった。

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