偽善者
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ハピネスの副産物に過ぎない。
ニアデスハピネスの本領。それは、黒色火薬の操作能力。それがメダルの力で強化された今、もう蝶の形のみに拘る必要はない。
蝶の羽は霧散され、巨大な綱となり、ウィザーソードガンを掴まえる。
「!」
「うるさい武器は、消音にしてもらうに限るよ!」
パピヨンはそのまま、火薬の糸を操りウィザーソードガンを上空へ投げ捨てる。
虚空へ星となったウィザードの得物をしり目に、パピヨンは丸腰の彼へ手刀を放った。
彼の攻略法。それには一にも二にも、魔法を使う隙を与えないこと。
威力よりも速度を重視し、パピヨンは手刀を放ち続ける。
武器を持たないウィザードは、当然防戦一方になるしかない。だが。
「何!?」
「捨て身で来るとは思わなかったでしょ」
左手でパピヨンの手刀を掴まえながら、ウィザードは言った。すでに彼の胸を抉る左手だ。彼へのダメージは相当あるに違いないが、それを甘んじて受けることを選んだのだ。おそらくその面の下では、笑みを浮かべているに違いない。
「ぐっ……放せ!」
パピヨンは自由な左手と、着火できる蝶たちで、ウィザードの体から火花を散らさせる。
だが、どれだけダメージを与えたとしても、彼の右手は決してパピヨンを話すことはなかった。
そして、ウィザードが見せつけるように右手にした魔法。
『ルパッチマジックタッチ ゴー』
「なっ……!?」
その音声が流れたころには、もうパピヨンに彼を止める手段はなかった。
『チョーイイネ キックストライク サイコー』
彼の足元に広がる、深紅の魔法陣。それはすぐ、その右足に炎の魔力を与えていく。
「し、しまっ……!」
「だああああああああああああああああああああああっ!」
そして放たれる、重い蹴り。
本来のストライクウィザードとは違い、ゼロ距離の右足蹴り。威力は低くなるが、右手を掴まれている以上、パピヨンに回避する手段はない。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
体に大きな魔法陣が刻印され、爆発が引き起こされる。
大きく吹き飛ばされ、地面を転がるパピヨン。その体からは、ポロポロとメダルが零れていく。
「ばかな……!? ここまで……!?」
「もう、終わりだよ」
ウィザードはメダルを掻きわけながら、パピヨンに歩み寄って来た。
「もし君が参加者で、俺が戦いを止めるつもりがなかったら、次の一撃で君は終わる。それは分かってるよね?」
「ホムンクルスだから、俺は聖杯戦争に参加できない……力づくで聖杯を奪おうとしても、お前のような化け物に阻まれる……」
パピヨンには、もうウィザードの声は聞こえていなかった。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ