第百二話 第二次国境会戦(前)
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部の参謀長でもあるからだ。艦隊参謀長だけでも大変なのに、方面軍隷下の艦隊の面倒も見なくてはならない…想像しただけで辞めたくなりそうだ。
「不甲斐ない?そんな事はないさ。マリネスク提督とアップルトン提督に無理するなと言ったのは私だし、与し易いと帝国軍にも思わせる事が出来る」
ユリアンとグリーンヒル大尉が皆にコーヒーを注いでまわっている。まったく…。
「無理をするなというのは分かりますが…」
司令部の皆もラップと似た様な心境なのだろう、代表するかの様にムライ中佐がそう口を開いた。わざと手を抜いて戦う、という考えに納得できないのかも知れない。
「いや、あれでいいんだ。これではっきりしたよ」
不可解なのは敵の意図と戦力構成だった。辺境守備のミューゼル軍、ヴィーレンシュタインの帝国艦隊…目的は何なのか、両者は同一の存在なのか。同一であれば目的は単純明快だった。アムリッツァ宙域とイゼルローン要塞の奪回、またはアムリッツアに駐留する我々の殲滅だ。我々同盟軍がそうした様に、一気呵成に大兵力を用いて作戦目的を果たす…その場合、アムリッツアの我々には対処できる時間余裕がない。どう考えてもハイネセンからの増援は間に合わないからだ。私が帝国軍の指揮官なら…私でなくとも迷わずそうするだろう。だが、現実に戦っているのはミューゼル軍麾下の艦隊だけだ。ボーデンでも戦闘が始まっているが、状況は似た様なものだ。となるとヴィーレンシュタインの大規模な帝国艦隊は、別の目的があってそこに終結していると考えざるを得ない。
「…という訳だ。おそらく敵の増援はミューゼル軍の本隊だけだろう。パトリチェフ少佐の考えが正しかった様だ」
私がそう言うと、大佐は大きな体を縮めて恐縮した。
「考えという程のものではありません。そういう可能性もあるだろうと思っただけでして」
恐縮しても全然小さくなっていない少佐の姿に皆が微笑む中、ムライ中佐が咳をして質問してきた。
「閣下のお考えは分かりました。では今後の方針はどの様になさるおつもりですか」
皆の視線が一斉に私に注がれる…私にやれるだろうか。
「うーん…帝国軍次第だね。とりあえずミッターマイヤー艦隊の撃破にとりかかるとしようか…参謀長、各艦隊に連絡…敵の増援に留意しつつ再編成を行え。第一艦隊前進後、第七艦隊は右翼、第八艦隊は左翼につけ」
「了解しました」
「ムライ中佐、フィッシャー提督に連絡。梯形陣に再編しつつ前進」
「了解致しました」
さて…噂のミッターマイヤー提督か。ウィンチェスターが神速と評するくらいだ、無理は禁物、無理は禁物…。
10:00
銀河帝国軍、ミッターマイヤー艦隊旗艦ベイオウルフ、
ウォルフガング・ミッターマイヤー
「叛乱軍第七、第八艦隊後退、その後方より新たな叛乱軍艦隊現れます…
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