第一章
[2]次話
四十代勝負下着
中西理恵は四十二歳だ、茶色にしたロングヘアで長い睫毛を持つ大きな二重の目に黒く奇麗なカーブを描いた細長い眉にすっきりとした顎を持っている。
色白で背は一六三程だ、その彼女にだ。
娘で中学三年生の志保、母親そっくりの顔だが黒髪をポニーテールにしている彼女に家の中で眉を曇らせたうえで言われていた。
「お母さん下着派手過ぎるわ」
「そうかしら」
「そうよ、黒とか紫とか」
まずは色から話した。
「ティーバックとかね」
「普通でしょ」
「あの、普通じゃないから」
娘は母に今度は怒った顔で告げた。
「絶対に」
「そうかしら」
「そうよ、お母さん四十二よ」
その年齢だというのだ。
「だったらね」
「地味な下着にしろっていうの」
「白とかベージュで」
ここでもまずは色から話した。
「デザインも普通の」
「大人しいものにっていうのね」
「そうよ、派手過ぎるでしょ」
「何言ってるのよ、誰がどんな下着じゃないと駄目とか」
母は怒る娘に何でもないといった顔で応えた。
「法律で決まってないでしょ」
「それはそうだけれど」
そう言われると娘も弱く一瞬口ごもった、だがそれは一瞬でまた言った。
「けれどね」
「駄目だっていうのね」
「年相応の」
そうしたというのだ。
「下着を着ないと」
「そう言うあんたは白かピンクね」
「中学生らしくね」
「中学生でも黒とか紫でもいいでしょ」
「校則にはそんなこと書いてないわ」
「今時そんな馬鹿な校則ある学校もないわね」
「あるみたいだけれどね」
愚かな教師達が定めているのだ。
「けれどね」
「それでもうちの学校にはないから」
「何着てもいいわね」
「そうだけれど」
それでもというのだ。
「私はね」
「下着はなのね」
「そうよ」
あくまでというのだ。
「年相応のね」
「そうした下着を選んでるのね」
「そして着けてるわ」
そうだというのだ。
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