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赤の夢
第一章
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                赤の夢
 随分赤い家だった、カーテンも床も天井も壁も赤く塗られていて。
 家具もだった、それで茂木海斗初老のサラリーマンの彼は言った、穏やかな外見で髪の毛は白いものが混じっている。
「赤過ぎないかい?」
「今それが流行なのよ」
 妻の智美が言ってきた、面長で小さな目と優しい顔立ちが印象的だ。黒髪は短く楚々とした感じで小柄である。
「赤いお家がね」
「お家だけじゃないよ」 
 夫はここで二人の服を見て言った。
「服だってね」
「流行だから」
「見ればお花も」
 部屋の中に飾ってあるそれもだ。
 赤い花瓶に赤いカーネーションがある、それで言うのだった。
「赤じゃない」
「だからね」
「流行なんだ」
「だからね」
「全部赤なんだ」
「そうなのよ」
 これがというのだ。
「本当にね」
「どんな流行なんだ」
 夫は首を傾げさせて言った。
「こんなに赤ばかりで」
「けれど共産主義じゃないわよ」
 妻は笑ってこうも言った。
「別にね」
「いや、共産主義になったら」
 どうなるかとだ、夫は妻に言い返した。
「最悪スターリンだよ」
「独裁国家ね」
「ああなるから」
 だからだというのだ。
「なって欲しくないよ」
「そうよね」
「蟹工船だってね」
 プロレタリア文学で有名なこの作品もというのだ。
「あのお仕事ハイリスクでね」
「ハイリターンね」
「そうだったしね」
「プロパガンダ小説ね」
「当時の共産党はコミンテルンの指示で動いていたんだ」
 このことを指摘した。
「だからテロも何でもする」
「そんな考えだったわね」
「だから取り締まられていたんだ」
「非合法組織で」
「何よりもソ連のトップがスターリンで」 
 当時はというのだ。
「あの人の指示で動いていたから」
「今思うと怖いわね」
「だから蟹工船も」
 この小説もというのだ。
「そうしたことも考えて読まないとね」
「駄目よね」
「そうだよ、それで共産主義じゃないね」
「ええ、ただ流行だから」 
 妻はまた答えた。
「それでよ」
「一面赤なんだ」
「そうなのよ」
「だったらいいけれど」
「じゃあご飯にしましょう」
 ここで時計を見ると午前の十時だった、少し早いと思ったが何時の間にか食事の用意が出来ていた。そして考えてみれば今日は平日なのにだ。
 家にいる、妻もパートに出ていない。このことに違和感を感じたが。
 食事になった、見ればトマトが出ていてメインはスパゲティペスカトーレだった、そして苺がデザートにあって。
「また赤なんだ」
「だから流行だから」
「何でこんなに赤ばかりなんだろう」
 夫は首を傾げさせた、そしてその赤一色の昼食を食べた。それから何故か風
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